――小野塚さんが感じる“末っ子あるある”は?
上がいると、ダメと大丈夫の加減…ラインが分かるんですよね。「ここまでやったらダメだな」「でもここまでくらいだったらいいか」「じゃあ、ここら辺いこう」みたいな、絶妙なところをうまく生きていく。あとはなるべく自分が楽になるように人を使ってやっていく、みたいなところは本当に末っ子あるあるだなと思いますね。
――では、役作りしやすいですか?
そうですね。「作る必要ある?」ってくらいの勢いになってますけども(笑)。もちろん設定はちゃんと守りつつ、ですよ? とにかく楽しんでやりたいです。それに、オーディションで選んでもらったからには、期待に全力で応えたいという気持ちがあります。石田さんが見て、俺にハマったっていうことは、俺の感覚と石田さんが雅ノ花に求めていたものが合ってるっていうことだと思うので、そこは変えずにいたいなって思います。
――セリフがない舞台。オーディションも通常とは違っていましたか?
変わってましたね。普通だったら台本を前もって頂いてそれを覚えていくか、直前に渡されてそれを覚えて読んだりするし、一人でオーディションをやるっていうことがないですね。今回はオーディション時に石田さんがその場で「じゃあこういう設定で。隣の人が今、暴露話をしました」っていうお題を出されて、こっちが驚いたリアクションをすると、
「うん、分かった」と言われてもう一回石田さんが手をたたいたら、さらにこっちは大きなリアクションをする…というのを繰り返していきました。率直に、すごく難しかったです。あくまで“暴露話”と言われているだけで、実際は何を言われているのかは自分の想像の中でしていかなきゃリアルな反応は取れないし。ただ驚いて「えぇ!?」っていう反応をしてもめちゃくちゃつまらないと思うので。その違いをどれだけ出すか、みたいなことですかね。難しかったけど、すごく楽しかったです。たくさん笑ってくれましたし。石田さんも本気でピッタリな役者を探しているからこそ、一緒になって考えてくれてる感じがして、楽しんでできたんだと思います。
――そうして主演が決まり、周囲の反応はいかがでしたか?
「よかったね」も多かったですけど、一番多かったのは「めちゃくちゃ面白そうだね」ですかね。NONSTYLEの石田さんの作品っていうだけで面白そうですし、あとはやっぱり、セリフを使わない動きだけの舞台ということで、周りの俳優の人たちでも「何それ?」っていう感じはあるみたいで。気になってくれている人は多いですね。少なくとも俺の周りではノンバーバルに挑んでいるのを見たことがないので、それに挑戦できるのがめちゃくちゃうれしいです。「小野塚、面白いことやってんな」って思ってもらえるような舞台になればいいなと思っています。
――近況についても聞かせてください。劇団EXILE公演『JAM-ザ・リサイタル-』の思い出は?
ハプニングばっかりだったなぁ…。でもそれを含めて面白かったと思いますね。もともと「JAM」って作品自体が、タイトルの通り“瓶にぐちゃぐちゃにそれぞれの個性を詰め込んだ”みたいなところがあって、統一性のある作品でもないので。ドラマ版を見てもらったら分かると思うんですけど、「この作品のジャンルってなに?」ってなっちゃうんですよ。
――確かに。どのジャンルにも当てはまらない、ですね。
俺自身もやりながらよく分かってなかったです。「何だこれ?」って思いながらやっていたので。でも、そう考えるだけ無駄だなって思えるのが「JAM」なので(笑)。だから今回のリサイタルもそんな感じでした。めちゃくちゃ面白かったんだけど、帰った後に「あれって何だったの?」みたいな(笑)。(西野タケル役の)町田くんから始まって、(レスリー・チャンチャン役の佐藤)寛太がアクションやって、俺たち(世良コージ役の小澤雄太と滝口ジュン役の小野塚)が歌ってゴミ拾いして、金城と山下(八木将康と秋山真太郎)がいて、(港町タカシ役の)SWAYくんがDJやってラップして、(川崎テツオ役の)鈴木(伸之)くんがカッコ良く3曲歌って、その後に(横山田ヒロシ役の)青柳さんがあんな感じになって…。「え、何これ?」っていう集合体だから(笑)。あんな大規模なリサイタルやることなんてないですからね。今の劇団EXILEメンバーだからできることであって、あれが他のメンバーだったら意味が分からな過ぎてできないと思う(笑)。俺らはお互いの信頼もあって、キャラも分かってて、お互いどういう感じでやってくるのか分かってるから面白くなったなって思います。
――ジャンルレス、そして“これ”という定義がない分、ファンの方々の受け入れ方もそれぞれ自由な感じがしました。
そうなんですよね。ドラマの最後に「地獄へ招待します」とか言われて、俺らは地獄に向かって走っていったから、「リサイタルは地獄の話なのかな?」って思ったら全然違った(笑)。本当にぶっ飛んでましたね。でもそれくらいぶっ飛んでるほうが面白いですけどね。だんだんと、セオリーがない世の中になってると思うんですよ。YouTube見てても、いろんな人がいるし。芸人さんを見てても、お笑いの形が多様になっているし。だから役者もこれがストレートだ、2.5次元だ、ミュージカルだっていう垣根みたいなのはなくていいと思うんですよね。あってないようなもので、それが面白ければいいんだと。型にはまってすごくシュールでこぢんまりしたものを作るよりも、攻めてる作品だからこそ俺は「JAM」が好きでした。