アーティストとしてさまざまな顔を持ち、活躍の幅を広げ続けるEXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチ。先日公演を終えたばかりの舞台「魍魎の匣」についてインタビューを実施。この作品がキャストやスタッフ陣によってどれだけ綿密に形作られたのか、主演を務めた橘の思いを聞いた。
舞台「魍魎の匣」を終えて
——舞台「魍魎の匣」は、キャストの皆さんの演じ方はもちろん、匣の演出、音響、照明すべてにこだわりを感じる作品でした。演出の松崎史也さんと話し合いを重ねていたそうですが、どのような過程を経てあの舞台は形作られていったのでしょうか。
松崎さんとは稽古が始まる前に一回話して、その時は詳しい話というよりは大まかな話をしたんです。「舞台に発生する熱量をお客様に届けましょう」と。稽古に入って最初のうちは、役作りのスキル的なところで、セリフの出し方や高さ、低さ、速さ、間など、セリフに対する作り方を話し、まずは京極堂(※演じる中禅寺秋彦の通称)という人間の話し方を構築することから入りました。こういう時はちょっと引いたほうがいい、ここは強く言ったほうがいいなど、相手にそのまま刺す言葉なのか、相手の奥まで刺す言葉なのか、そういうことを含めながらしゃべり方を固めていきました。なので、まずはキャラクターの中身を埋めていったという印象が強いですね。舞台全体の見え方に対する演出に関しては、松崎さんが全部考えてくれて。稽古場には本番のセットがなかったので、その演出の全体像を見て、芝居だけで稽古をしていました。実際に劇場へ入り、セットも入った状態の演出を見たときは「これはすごいものができそうだな」という実感と、「松崎さんを信頼して間違いなかったんだな」という思いがありました。
——たたみ掛けるような京極堂の長ゼリフ、圧巻でした。公演を重ねるごとに、橘さんの京極堂への理解はどのように変化していきましたか?
公演を重ねていくと舞台に慣れていって、自分の中に余裕も生まれてくる。そうすると演技に対して考えられる事柄が増えていきますよね。けれど最初の頃はやはり、セリフを言うことや場の空気を作っていかなくてはいけないという観点ですごく必死な部分があったんです。回を重ねていくごとに周りの登場人物との関係値を意識できるようになりました。関口ならちょっといじって、でも本当は仲がいいとか、榎さん(榎木津)だったら普段からそんなにがっつり一緒にいるわけではないですけど、通じ合ってる部分があってすごく信頼があるとか。木場とはそんなにたくさん会うわけではないけど、お互い認め合いつつそこまでくっつき合わない感じがあったり。そうして実際の登場人物との関係値をだんだん体感できるようになったので、その中で“京極堂はこういう人間なんだな”と。そういう掘り起こし方をしていた気がします。
——原作者である京極夏彦先生も舞台をご覧になられたということで、感想など直接聞かれたりしましたか?
先生からは「すごく良かったです!面白かったです」と言って頂きました。その翌日、京極先生を担当されている講談社の方からメールが届いて、京極先生が珍しく喜ばれたという感想を頂いたんです。そこで(先生が)本当に喜んでくれたんだという実感が生まれましたね。
——カンパニーの雰囲気はいかがでしたか? 共演者の皆さんとご飯に行ったりはできましたか?
毎日一緒にご飯に行けていたわけではありませんが、本当に共演者に恵まれたなという印象があります。役の時もそうですし、座組のことを思って動ける人たちだったので、積極的にみんなでご飯に行ってコミュニケーションを取ろうとしたりすることが自然な形でできた座組でした。目に見えない一人ひとりの気遣いが、今回の公演の成功につながったと思います。
——多岐にわたってご活躍されている橘さんですが、「役者 橘ケンチ」としての今後の展望を教えてください。
役者に限らずいろんな仕事をさせていただいているので、役者一本に絞ることはないです。でも、自分が他の仕事を通して経験したことがすべて役に活きると思うので、いいタイミングが来れば、また役者をやることももちろんあると思います。京極堂シリーズに関して言えば、今回すごく感触が良かったので、舞台なのか映像なのかは分かりませんが、別の形でまたいつかやってみたいなと思います。
――今回演じた京極堂にも通じるところがありますが、橘さんと言えば、WEBで「たちばな書店」を運営されていらっしゃいますよね。拝見させていただいていると、いつもいろんなジャンルの本に触れていらっしゃいます。橘さんが本を読むきっかけは、書店での出会いですか?
まず本屋に行ってジャケ買いをするか、その時気になっていたものを手に取るか。あとは人から薦められて読むことが多いですね。自分の尊敬している人とかから「この本面白いよ」って言われると気になるので。あとは「たちばな書店」を始めてから本をいただく機会が増えたので、いただいた本を読んでいることも多いですね。
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