東京など4都市にて今秋、演出・上村聡史、眞島秀和、倉科カナらが出演する舞台『My Boy Jack』の上演が決定した。
『My Boy Jack』は、「ジャングル・ブック」などで知られるノーベル文学賞受賞作家ラドヤード・キプリングが第一次世界大戦中に書いた詩。声高に戦争が悪いとも、戦争に行かなければ良かったとも、息子を返せとも言わず、荒れ狂う風と潮に翻弄(ほんろう)され、なすすべもなくいる者のやり場のない憤りや嘆きが語られている。
後に名優デイビッド・ヘイグが戯曲化し、1997年にウェストエンドで上演、イギリスで07年にテレビ映画化された際には、息子役をダニエル・ラドクリフが演じたことも話題となった。
舞台の演出を務めるのは、『Oslo(オスロ)』『野鴨-Vildanden-』『A・NUMBER』『エンジェルス・イン・アメリカ』などを手掛け、戯曲の面白さを最大限に引き出す上村聡史。
キャストは、人脈を使って息子を軍にねじ込む厳格で優しい父を眞島秀和、子どもたちに無償の愛を注ぐ母を倉科カナ、ハンデがあるにも関わらず必死に努力し将校になった息子を前田旺志郎、不安を押し殺しながら日々を暮らす姉を夏子が演じる。さらには佐川和正、土屋佑壱、小林大介らが名を連ねる。
上演決定に当たり、演出の上村聡史、出演する眞島秀和、倉科カナ、前田旺志郎、夏子からコメントが到着した。時代の波にのまれ息子を戦地に送り出すしかなかった父の気持ち、息子の気持ち、姉の気持ち、母の気持ちを切々と伝える本作にどうぞご期待を。
[演出・上村聡史コメント]
ノーベル賞を受賞し、イギリスを代表する小説家でもあり詩人のラドヤード・キプリング。その輝かしい功績とは逆に帝国主義の伝道者とも評された、近代の知性を象徴するような人物。本作は、俳優としても活躍するデイビッド・ヘイグがキプリングの同名の詩(16年)に影響を受け創作された物語ですが、 時代を切り開こうとする人間の知性の闇を描いているように私は感じます。“帝国主義”と聞くと前時代的で恐ろしい印象ですが、“愛国心”と聞くと大きな共同体に対し献身的な印象があります。しかし、この2つは紙一重で、「国の正義のため」という名目の下、個人の未来や人間性を崩壊させる殺傷能力があります。そしてそれは、ほんの百年前の世界、つまり戦争の世紀に大きく渦巻いていましたが、果たして現代の私たちは、本当の意味で百数年前から前進しているのでしょうか? この物語は、第一次世界大戦の時代を舞台にしたキプリングの家族の物語ですが、栄誉、地位、名声といった男性の知性が作り出した威光が一気に闇に包まれていく様を、この時代に立ち上げることができればと思います。
[眞島秀和 コメント]
またとてつもなく高い壁が、目の前に現れました。稽古が始まるのはまだちょっと先ですが、今から楽しみです。なんてことは正直言えません。しかし、難しいことに挑戦できるのもこの仕事の醍醐味です。戦場に息子を送り出す父親という役を、今、演じる意味を感じながら、初めてご一緒する演出の上村さん、出演者、スタッフの皆様と一緒にこの作品をお届けします。頑張ります。
[倉科カナコメント]
今回、『ガラスの動物園』でご一緒させていただいた上村さんはじめ、とても仲の良いマッシーこと眞島さんとの夫婦役、体当たりしても受け止めてくださるという安心感があります! 私が演じる、戦争に息子を送り出した母親・キャリーという役的にも、お互いに静かにリングに上がり、静かに殴り合い、静かに血の涙を流しているようなイメージのある作品だったので、みんなで緻密に役を掘り下げ、板の上では思い切りぶつけられるように稽古を重ねていけたらと思っています。一たび戦争となれば、人を殺すことがまかり通り、そして名誉になる。戦死しても英雄となる。名誉とは英雄とは何か、今一度考えるべきことだな、と台本を読み強く思いました。戦争というものに対して、キプリング家の中でも意見が違う、きっと見てくださった方々もいろんな意見があると思います。正しいや間違いということでなく、一緒に考えてみるきっかけになれば良いなと思います。
[前田旺志郎コメント]
舞台を何度も拝見したことがある上村さんからの演出を受けられることに、稽古前の今から緊張とワクワクで興奮しております。今回、僕がやらせていただくジョンという役は、戦地に出て戦うことに憧れを持つ青年です。家族からのプレッシャーを感じながら、それでも戦地へ行き、家を出たいと強く思っています。ジョンは本作のテーマである親子愛や、戦時中の価値観のぶつかりを担うとても重要な役どころだと感じております。それだけの大役なので、見ていただく皆さまにジョンという人間を強く印象付けられるように、この役を大切に演じていきたいなと思います。皆さまの心に残るような舞台になるよう全力で努めますので、ぜひご覧ください。
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