――映像になった舞台『千と千尋の神隠し』をご覧になった感想は?
7月の大千秋楽後に配信を初めて見たのですが、「こんな感じだったんだ!」と思いました。次のエピソードが何なのか、誰がどこにいるのか全部分かっているのに、それでもあっという間に見きってしまいました。劇場の客席で見ている時はまずセットや全体を把握しようとすることが多いと思いますが、映像で見るのは客席から見ているのとは全然違って、カット割りがあってキャストの近くに寄っていくので、お芝居が伝わりやすいかもしれませんね。
――ブルーレイには、御園座大千秋楽のカーテンコールや制作過程のメーキング映像も特典として入っています。
各地でのカーテンコールの景色は本当に忘れられません。萌音ちゃんと公演中に交わしていた交換日記で、「(カーテンコールで)何話す?」とか、「今日はこういうこと言ったよ」と日常的に共有しあったりしていたのですが、特に博多座と御園座の千秋楽に関しては鮮明に覚えています。今回収録されている御園座の大千秋楽のカーテンコールではカンパニーみんなが思いを伝えて、思いがあふれて、出演できなかった人たちの思いもカーテンコールに乗っかっていたように感じました。萌音ちゃん、ゆうみちゃん(咲妃みゆ)はじめ大千秋楽に出演できなかったキャストも参加できない稽古、本番中もずっとモニターで見てくれていました。 大千秋楽公演は、舞台稽古から「萌音ちゃんの思いを乗せて演じたい」と思っていたので、頭の片隅で「萌音ちゃんてこういう感じだったな」と思いながら演じていました。私も改めてカーテンコールを振り返って見たいですし、稽古のメーキングは絶対面白いと思います。
[上白石萌音コメント]
――初演で体調不良のため一部出演できなかった御園座公演への思いをお聞かせください。
初演の御園座には、出演できず悔しいという思いだけではなく、土壇場を全員で踏ん張ったという特別な思い入れがあります。私はその渦中にはおりませんでしたが、リモートでその熱を感じていました。舞台上やロビーで練習している姿をビデオ通話で見ていたので、御園座に一歩踏み入れたら泣いてしまうのではというくらいです。そこでもう一度“千尋”として舞台に立つことができるのはとてもうれしく、ご縁を感じます。
――舞台『千と千尋の神隠し』は、上白石さんにとってどんな公演でしたか?
まだ終われていない、まだ続いている感じがします。他の何をしていても、まだ千尋が心の中にいる感覚。実際、カンパニーの皆さんとの関係も続いているので、すごく大切な作品であり、カンパニーです。一旦は千秋楽を迎えましたが、こうやってまた会えるような気がしていました。
――25年に帝国劇場が建て替えのため一時閉館となりますが、その前年に帝国劇場で舞台『千と千尋の神隠し』を上演することについてはいかがですか?
帝国劇場は演劇を志す者にとっては、大きな場所。お客さまの中にも名残惜しく思っている方がたくさんいらっしゃると思います。劇場への感謝の気持ちを込めながら他の作品も上演されていくと思うので、そのラインアップに加われることがうれしいです。 楽屋の窓からよくみんなで顔を出して挨拶していたので、その吹き抜けの部分はぜひ新しい帝劇にも残してほしいです(笑)。
――映像になった舞台『千と千尋の神隠し』をご覧になっていかがでしたか?
環奈ちゃんの演技を客席から見ていたことはありましたが、自分が演じているのを客観的に見るのは新鮮でした。劇場だと前の客席からしか見られないような細かいパペティアの動きやセットのこだわり、会話をしている人以外の顔などが映っているので、“通好み”の仕上がりになっているかと思います。初演のエネルギーの爆発を映像で感じていただきたいですし、御園座再演をご覧になる前に「履修」なさるの も面白いと思います (笑)。ご観劇がかなわない方も、御園座公演と同じ時期にご自宅で公演を見ることができますね。
――ブルーレイには、御園座大千秋楽のカーテンコールや制作過程のメーキング映像も特典として入っています。
(メーキング映像は)ここまで見せていいの?というところまで赤裸々に映されています。幕を上げるまでの裏側 には、美しい部分も泥臭い部分もなかなかうまくかみ合わない部分もあります。作品を愛してくださっている方はもちろん、将来演劇に携わりたい方にも、現場の生の雰囲気を感じていただきたいです。
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