発売から10年以上たっても色あせない乙女ゲームの金字塔「薄桜鬼」。実写ドラマで主人公・土方歳三にふんするのは崎山つばさ。崎山が演じるからこそ生まれる、土方という人間の新たな魅力に迫る。
――新選組副長である土方を演じる上で、こだわったポイントは?
最初、土方さんって鬼の副長と呼ばれているくらいなので、すごく厳しくて怖い人なのかなと思ったんですけど、「薄桜鬼」のアニメ版を見たり、新選組を題材にした別の作品の本を読んだりして、鬼の副長としての一面もありながら、そうである理由もちゃんとあるし、男として曲げたくない部分や“誠”に対しての思いや刀に対しての思い…そういうものの積み重ねが彼をつくっていることが分かりました。いろんな要素をひもといていくと、土方さんはすごく愛されるべき人というか、男の人から見ても女の人から見てもカッコいい人だったんだなと感じました。
――演じて感じた、土方さんの魅力は?
土方さんなりの戦い方があって、新選組を大きくするために自分がするべきことはなんだろうと最善を考えて動いている。しかも、頭の回転もすごく速い人なんですよね。一つ一つの判断が早いし、何かあってもすぐカバーできる。そういう男らしい一面に、演じながら僕自身も男としてほれる部分がありました。
――土方を演じた崎山さんから見て、ヒロインの千鶴はどんな女性に映りましたか?
「薄桜鬼」における土方さんに、すごく大きな影響を与えた存在だと思います。千鶴と会うことによって人間らしさや温かい部分というのが引き出されたのかなと思うし。雰囲気も柔らかくなるというか、そういう部分があるんだろうなと感じましたね。
――本作で挑んだアクションシーンで苦労した部分、こだわったポイントは?
この作品には、変若水(おちみず)というアイテムが出てくるんですけど、それが結構、キーになっています。土方も、新選組でいる時の殺陣と変若水を手にした時の殺陣というのを変えたいなと思っていて。個人的には、そこをすごく意識してアクションシーンに挑みました。変若水を手にしてからはよりアクロバティックに、というか…少しファンタジー寄りの動きを目指しました。新選組でいる時は、試衛館時代からずっと刀をやっていたキャラクターとして、土方さんならではの特殊な刀の構え方とかを意識していました。
――コロナ禍での撮影は、大変なことも多かったのでは?
そうですね。やっぱりコミュニケーションを積極的に取るのは難しいですし、いろいろ気にしないといけないこともありますし…。ごはんを食べに行ったりすることもできなかったので、そういう意味ではスタッフやキャストと話し合う時間が本当に限られていました。だけど、各々が作ってきたものを現場で合わせて作っていくような撮影だったので、新しくて面白かったです。
――崎山さんの中で、コロナ禍を通してお仕事に対する考え方が変わった部分はありますか?
どの作品、ということではないのですが、距離を取ることでも見えるものがあるんだと気付きました。例えば、相手に近付きたくてセリフを言うシーンがあったとしても、ちょっと距離を取って言ってみたらそこに見えるものがあるというか。今までは何も関係なく近付いてたけど、近付いちゃダメだってなった時、そうなったとしても成立するものはあるんだと、なんだか選択肢が増えた感じがします。
――「薄桜鬼」で崎山さんが好きなキャラクターは?
風間ですね。鬼は鬼で敵対するキャラクターとして描かれているんですけど、彼らには彼らのドラマがあって生き方があるので、そこがやっぱり「薄桜鬼」における魅力の一つだなと思って。「薄桜鬼」ってゲームにおいていろんなルートがあるじゃないですか。もちろん風間ルートもあるんですけど、僕がもし千鶴だったら風間についていっちゃうかもって思いました。
――崎山さんが感じている風間の魅力とは?
ちょっと影のある…悪そうな人について行きたくなっちゃう感覚というか。鬼として強大な力を持っているにも関わらず、千鶴に対して無理強いをしないというか。様子を見て駆け引きをするあたりとか、余裕がってカッコいいなと思うし。あとは単純に、鬼になってる風間ってカッコいいなって(笑)。
――ゲーム原作というところで、ドラマに刻まれているゲームの要素があれば教えてください。
顎クイです(笑)。アハハハ! “スチルカット”というのがあって。「薄桜鬼」のゲームで出てきたスチルカットをそのまま再現するシーンがあるんです。手の角度はこうですか? とか、細部までこだわりました。原作リスペクトが強いシーンでもあるので、そこは特に原作ファンの方にも見ていただきたいですし、注目していただきたいです。
――崎山さんが千鶴とのやり取りの中で、キュンとした瞬間はありますか?
おにぎり半分こですかね。おにぎりを半分に割って、知らず知らずのうちに千鶴の方を多くして渡していたんですよ。なんかそれって、撮影していくうちにだんだんそういう気持ちになっていったんだろうなって。自分でお芝居しながらも、それを客観的に見ているとキュンとするなと思って。それを自然にしていたことに自分自身キュンとしちゃいました。
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