――いち当事者として、零さんのリリックはこういう感情を抱いたことのある人にしか書けないものだなと感じましたし、YAMASHOさんパートになった時の目が覚めるような感覚もすごかったです。いろんなものをシャットアウトしていた思考を破ってくれるような声、 すごくパワーがあるなと。
マジでそうなんですよ〜! その声の対比もよかったですよね。

――零さんのバースは平坦に、あまり起伏をつけずに表現されてますよね。だからこそ、より“心の無”を感じました。
この曲に関しては、かっこよく歌うことを意識するべきではないと思って。かっこよくやるなら、YAMASHOさんパートぐらいシャウトで感情的にラップして…っていう風に歌うこともできたんですけど。中途半端にフローをつけるようなことはしたくなくて、あえて語り口調のラップにしていきました。ただ、ラップってテンションを間違えるとスベるし、伝わるものも伝わらなくなっちゃうので。平坦にスッと耳に入ってくるような感じでスタートすることを意識しましたね。そして自分の感情のままに表現してRECしたら、何もかもに疲れている人のような…そういう感じになって。録音ブースでも「おぉ…」てなっていたんですけど、YAMASHOさんも「やばいな」って言ってくれて、すごくうれしかったですね。そういうところで、ちょっとゾッとする部分も入れました。
――反芻思考に支配され、その無限ループから抜け出せない時の苦しさがとてもリアルに表現されている1曲。ある人には同じ目線で寄り添い、またある人には“人がこうなってしまう”という気づきにもなるなと感じました。
ありがとうございます。YAMASHOさんも言ってくれていたんですけど、「人の心はあまりに脆い」という僕のリリックを読みながら「ここ、俺もめっちゃ言いたくて。本当そうなんよ、いい加減気づけよって思う」と話していたんです。学校のいじめとかもそうですけど、例えば僕らなら、相手が言い返せないと分かっていてネットでいろいろ言う人がいるけれど、人の心をなんだと思ってるの?って気持ちをそのままリリックにしました。
――有名税なんて言葉で片づけられてしまったり、好き勝手にネット上で投げられた言葉は、その先で言葉を受け取る生身の人間へ意識が向いてないなと感じます。
ですよね。「好き勝手に言われて、それで活動を辞めちゃう人もいる…そんなのおかしいじゃん?」って、YAMASHOさんも言ってくれて。そういう気づきもあるし、この歌はいろんなところに思いを散ればめていますね。…一番最後もそうですけど。
――「誰かの幸せ成り立つためには誰かの痛みが必要なのか」ですね。本来、その人の幸せは外的要因に左右されずに確立されるべきであって、誰かを蹴落として得た幸せに何の意味があるのか…。
ほんまに。なんで?って思いますよね。理解ができないです。
――しかも配信日はYAMASHOさんの誕生日。生死をテーマにした曲を、誕生日という日にリリースする意義も大きいですね。
YAMASHOさんが今年で30歳を迎えるので、30歳というタイミングで、生と死について考えることも増えたと話していて。曲作りを通して改めて命に向き合えたというか、すごくいいタイミングだと言ってくれました。ただ、「ほんまに誕生日でいいの?」みたいな感じで、結構びっくりしてました(笑)。「ほんまに? マジで?」って何度も確認されたので、逆に誕生日にしちゃって申し訳なかったかな…って思ったりもしましたね(笑)。
――「Crisis」というタイトル通り、お二人にとても大きな転換点になりそうです。
崩壊して何かが変わる瞬間というか、そんな機会になる気がします。
――ファンの方がどう受け取られるかも気になりますね。
ファンの人はもちろん、ふとおすすめに上がっていて聴いたら、「やべー!」「なんか救われたー!」ってなる人が現れたらいいですよね。今苦しい人が「もうちょっとだけ生きてみよう」と思ってもらえたら。 そういう人が増えてほしいなと思います。
――いちど底まで行っちゃうと、一気に持ち直すのは難しいと思うんです。でも、「もうちょっとだけ」とは、思えるというか。
たしかに。いくら持ち直して普通ぐらいには戻れても、反対の上ぶれまではいけないですよね。“楽しい!幸せ!”とか、一気にそういう感情になれたらいいけど、なかなか難しいですよね。

――大変な状況の中でも、川村さんが活動を続けてくださったからこそ生まれた楽曲でもありますよね。
ありがとうございます。ホント…そうですね。お休みしていた時も、仕事が立て込んでいて“なんとしても戻んなきゃ”という状況で、それこそ劇的にグッと持ち直したタイミングとかでは戻れていないんですけど。でも、この曲を作ることができて良かったです。これまでも、俺にしかできないことをやりたいってずっと思ってきたんですよ。人がやろうとしないことだとしても、「それで周りが良くなるんやったら、それでええやん」っていう思いが強くて。零では、ほんまにそれを反映させているんですよね。












