初回の収録で、ランキングついでに夏井先生がサラッと2〜3句手直しをしたら、これがとても鮮やかでした。このビフォーアフターショーが番組の見せ場になると思ったので、さっそく、全ての俳句で添削して欲しいと夏井先生にオファーしました。で、めちゃくちゃ怒られました(笑)。というのも、俳句の世界では、良い発想の句は推敲するけど、凡人以下の句は捨てちゃうんですって。でも、視聴者は絶対に添削ショーを楽しみにしているからやるべきだと言い続けたら、夏井先生も納得してくれました。いまだに「バラエティーの演出家はホントに無茶な注文ばかりしてくると思った。凡人発想の俳句を手直しするというのは俳句界ではあり得ない」と言われます(笑)。
――意外な人が俳句で活躍したのでは?
横尾さんや、千賀(健永)さんがタイトル戦で優勝するなんて、きっと誰も予想してなかったと思うんです。千賀さんが初優勝で嬉し泣きしたときは夏井先生ももらい泣きしていたし、全国で句会をすると、多くの中高生から「キスマイが頑張っている姿を見て興味を持った」と言われると聞きました。
その後も(中島)健人くんや(川島)如恵留くん、最近だと浮所(飛貴)くんも才能アリ1位を取りました。彼らにとって俳句はもちろん本業に関係ないし、ともすれば才能ナシでもオイシイと思いそうじゃないですか。でも、そんなことは全く考えていなくて、常に1位を目指してくれる姿を見て、番組のファンが明らかに増えました。その流れを作ってくれたのは、男性アイドルとしては番組に初めて登場してくれた北山(宏光)さんですね。最初は才能ナシでしたが、成長して今や特待生1級になりました。
―「俳句」で一番成長を感じた出演者はどなたなのでしょうか。
千原ジュニアさんです。今ではクオリティーの安定感はNo.1ですが、最初の俳句は【滝を見て蛇口閉めたか考える】で才能ナシ10点です。季語の「滝」は主役じゃないし「見て」という要らない言葉があるし。でもここから俳句の面白さにどんどん気づいて、作風も変化しています。初期の優秀句で印象的なのは、【御出席の葉書投函秋日和(※御に二重線、出席を◯で囲む)】です。フリップショー的なアイデアに感服しますが、最近の作風はもうアイデア勝負というより、俳人のように質実剛健です。俳句作りが大好きなのが、作品から伝わってきます。
(#197千原ジュニア)
――アート企画のレベルの高さも番組の特徴だと思います。それらで印象に残っている作品は?
光宗(薫)さんが東京タワーを描いた水彩画です(2016年7月放送)。
アートを見て、あんなに感動したことは人生で初めてでした。『プレバト!!』が多くの視聴者に支持されてきた要因は、全テレビ番組の中で、出演者が頑張っている総時間がきっと一番多いからだと僕は思っています。辻元(舞)さんが名人10段に昇格したステンドグラスの作品(2023年11月放送)は、クオリティーも労力も番組最高峰の作品だと思います。また、一番成長したと思うのは、(田中)道子さん。初挑戦の時はよく見ると自転車がちょっと歪んでいるんですよね。それが、麻布十番の首都高を描いた作品(2021年6月放送)で突然、覚醒していました。感情をむき出しにする性格もこの番組向きで、すごく助かっています(笑)。
(#98光宗薫/東京タワー)
(#320田中道子『出勤中』) (#429辻元舞『ステンドグラスの塔』
――そうすると、500回SPでも開催される「水彩画コンクール」の順位発表はハラハラしますね。
浜田さんもよく言っていますが、大詰めの時のスタジオの空気はバラエティー番組と思えないほど張り詰めています。2021年の水彩画コンクールでは、どこも減点できない100点満点の作品を5人が描き上げて、野村重存先生が困り果てました。それをきっかけに、絶対に得点に差をつける「相対評価システム」を導入したのですが、それでも野村先生は長時間悩んでいますよ。
――500回SPでは「スプレーアートコンテスト」も開催しますね。
番組が世間との接点を持ち始めたのは「スプレーアート」からでした。シャッター商店街や、コロナ禍の鉄道を応援する作品はすごく反響があったし、その後、廃校になる中学校を舞台にした「黒板アート」も多くの人に見てもらえました。テレビ番組を作っている僕らが言ってはいけないのですが、やはり実物を見た方が作品の迫力やディテールへの情熱を感じてもらえます。その手応えが、今年初めて開催した『プレバト才能アリ展』へと繋がっていきました。
(#301金村美玖スプレーアート)
――世間との接点という意味では俳句も対外試合を定期的に開催していますよね。
実は、特待生制度を作った時点では、まだまだ夏井先生に実力は認めてもらえてなかったんです。でも、芸能人の俳句のレベルが上がるにつれて、夏井先生から道場破り的な腕試しの許可も出ました。俳句甲子園で優勝した高校生とも対戦したし、夏井門下生の天才小中高生との対決も毎回とてもハイレベルです。500回SPに出場する高校1年生のかりんさんは初出演は小学4年生でした。彼女と梅沢さんたちの対決を見たら、夏井先生が『プレバト!!』500回で広げてきた俳句の裾野を皆さんにも感じてもらえると思います。












