COCOON PRODUCTION 2022『ツダマンの世界』が、11月23日にシアターコクーンにて幕を開けた。
作・演出を務めるのは、シアターコクーン芸術監督の松尾スズキ。2年ぶりとなる期待の最新作『ツダマンの世界』では、太宰治や井伏鱒二の関係に着想を得て日本の昭和初期から戦後を舞台に主人公・ツダマンを取り巻く人々の濃密な愛憎劇を描く。
今回、松尾は作・演出のみならず劇中に登場するオリジナル楽曲の作曲も自ら手掛けた。これまでの公演でも作詞や作曲を行ってきたが、全編にわたる作曲を自らが手掛けるのは初の試みとなる。
作中で文壇の最高峰である「月田川賞」を目指しながら、押し掛け弟子や周囲の人々に翻弄(ほんろう)される物語の主人公・ツダマンこと小説家・津田万治を演じるのは阿部サダヲ。佐賀の豪商の息子で、ツダマンに弟子になりたいと志願するやっかいだが憎めない弟子・長谷川葉蔵には間宮祥太朗。この物語の語り部となる女中・オシダホキには江口のりこ。葉蔵の世話係・強張一三には村杉蝉之介。劇団員で歌手志望の津田の愛人・神林房枝には笠松はる。葉蔵と関係を持とうとする謎の文学少女・兼持栄恵には見上愛。ツダマンの友人の小説家・大名狂児には皆川猿時。戦争未亡人であったが、大名の勧めで津田万治に嫁ぐ妻・津田数には吉田羊。
さらに町田水城、井上尚、青木祥子、中井千聖、八木光太郎、橋本隆佑、河井克夫ら個性と魅力にあふれる俳優陣が集結した。
松尾が昭和初期の激動の世の中にありながら、文学に取りつかれる小説家たちとその愛憎に巻き込まれる人々の悲喜劇をエンターテインメントたっぷりに描く。このたび、舞台写真と作・演出の松尾と、阿部、間宮、吉田より公演初日を迎えてのコメントが届いた。
[松尾スズキコメント]
皆さま、お元気ですか。2年ぶりの新作です。もっとばんばん新作を書き飛ばしていた時期もありましたが、もはや、これぐらいのペースになってしまった松尾です。だからこそ、一作一作大事に仕上げてまいります。いっぱい本を読みました。昭和の時代の作品です。調べれば調べるほど昭和の文豪たちは、コンプライアンスとはほど遠い世界を生きておりました。私も、無頼と呼ばれた時代もありましたが、さすがにここまでのことはない。インテリジェンスと野蛮が混在した昭和の文化人たち、それを支えたり振り回されたりする人々の滑稽で、かつひたむきで悲惨な姿をご堪能ください。
[阿部サダヲコメント]
大作です! そんで大作ってやっぱり大変なんですね! 出てる役者ほぼ全員、叫んで、笑って、着替えて、歌って、踊って、着替えて、たたいて、かぶって、着替えてます(笑)。大変です! 30回くらい?場面も転換するから、スタッフさんも大変です。生放送の歌番組みたいな動きです。松尾さんの舞台に初めて出演されるキャストの方々がとても面白いです! なんでしょう? 松尾さんの今までの作品にはなかった新しい不思議な感覚が楽しめそうな気がします! よろしくお願いします。
[間宮祥太朗コメント]
『ツダマンの世界』、10月に稽古が始まり一カ月と少し、気付けば本番がもう目の前まで来ました。稽古場はとても居心地がよく、少しずつ作品が構築されていく様子に高揚した毎日でした。自分の出ていない部分の稽古を見ている時間も好きだったのですが、本番が始まるとなかなか悠長に見ていられなくなるんだなと衣装付きの通し稽古をした時に実感しました。初めて立つシアターコクーンの舞台で、美術照明音響が織り成すツダマンの世界に、これからの本番が楽しみです。
[吉田羊コメント]
松尾さんの世界がみるみる立ち上がってゆくのを間近に見られる、幸せなお稽古でした。演出意図はこれかな?と発見できた日はなおうれしく、松尾さんの頭の中に半歩近付けたような気がして、帰り道の足取りがふわふわと軽かったものです。共演の皆さんの最高に面白いお芝居をかぶりつきで見られた特等席を、今度はご来場のお客さまにお譲りして、私は精いっぱい、数を生きたいと思います。どうぞ皆さま、めくるめく世界に身を投じ、心ゆくまでご堪能ください。そして観劇後はさまざまな感想を”すり合わせて”お楽しみくださいませ。
公演は12月18日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーン、12月23日(金)~29日(木)まで京都・ロームシアター京都メインホールにて。また、12月7日(水)後6.00公演のライブ配信も決定した。詳しくは下記へ。
配信対象公演:12月7日(水)後6.00公演
視聴チケット取扱い:MY Bunkamura、イープラス「Streaming+」
撮影◎細野晋司