演出:宮本亞門×主演:東山紀之×共演:谷原章介で送るPARCO劇場オープニング・シリーズ『チョコレートドーナツ』が、12月20日(日)に初日を迎えた。
本作は当初、12月7日(月)開幕だったのだが、公演関係者が新型コロナウイルスに感染したため19日(土)までの公演を中止し開幕を延期していた。
『チョコレートドーナツ』の舞台は、1979年のウエスト・ハリウッド。ゲイの男性が育児放棄された障がいを持つ子どもを育てたという実話に着想を得て製作された映画『チョコレートドーナツ(原題:ANY DAYNOW)』は、社会的マイノリティーが直面する問題を告発しつつ、愛と自由を求める人間の本質を描いている。
日本でも広く支持を得たこの映画を東山紀之主演、宮本亞門演出で世界で初めて舞台化したのが本作だ。
東山が演じるのは、シンガーを夢見ながらショーパブの口パクダンサーとして日銭を稼ぐルディ。出口の見えない生活の中、ルディの人生は運命の人ポール、隣室のダウン症のある少年マルコと出会うことで変わっていく。映画ではトニー賞受賞俳優アラン・カミングが演じたこの主人公に、東山がその魅惑のダンス、歌、演技で挑む。
ルディと共に少年マルコを育てようと、世間と闘う検察官ポールを演じるのは谷原章介。ゲイのカップルであるルディとポールが悩み迷いつつ、手を組んで世の中に立ち向かっていく様は心を打つ。
またダウン症のある少年マルコ役として、実際にダウン症のある高橋永と丹下開登がダブルキャストで出演。さらに高畑淳子をはじめとした多彩な俳優陣が集う。
70年代のアメリカのヒットナンバーを散りばめた華やかなショーシーンと緊迫の法廷ドラマを織り交ぜつつ、愛と希望、未来を求めて、苦闘する人間の姿を感動的にうたい上げるヒューマンドラマ『チョコレートドーナツ』。宮本亞門がタクトを振る舞台世界初演に、どうぞご期待を!
20日の開演に先立ち、来場客にお礼を言うためにあいさつに立った演出の宮本亞門は「初日が延期なってからの今日まで、キャスト・スタッフが混沌としていたが、この状況の中でも劇場に足を運んでくださるお客様がいるということを唯一の希望にして頑張ってきた」と話した。また、療養中の二人は回復に向かっていることも伝えられた。
カーテンコールは初めから総立ち。割れんばかりの拍手が鳴りやまず、東山紀之、谷原章介をはじめとする出演者は客席に向けて深々とおじぎをした後、笑顔で手を振り、観客へ感謝を伝えていた。
初日公演を終えた宮本亞門、東山紀之、谷原章介からコメントが届いた。
[宮本亞門]
こんなに観客の皆さまと舞台が一つになった初日は、初めてです。カーテンコールの熱い拍手はボクの人生でも聞いたことがなく「世界の誰もが幸せになるべきだ」というメッセージが皆さまに伝わったのだと思います。まさに、このコロナ禍で「分断」を越えた感動が劇場に満ちあふれる最高に幸せな時間でした。特に(初日の)マルコ役を演じた丹下開登くんの芝居にはノックアウト、すごい役者がまた1人生まれました。東山紀之さんもルディ役が乗り移り見事としかいいようがない! 2人はいとおし過ぎる親子でした。明日の永くんもきっと素晴らしい演技を見せてくれると思います。このカンパニー全員が一丸となって作った愛情あふれる舞台を、ぜひ世界中の人に見てもらいたいと心から思った初日でした。
[東山紀之]
これまで経験した初日とは全く違った思いがありました。世界がコロナで変わってしまった今、僕らつくる側だけでなく、お客様の「エンターテインメントの灯を絶やしちゃいけない」という思いも強く感じられました。初日というのは人の心に灯をともすような感じがします。これが大きな灯になって聖火のようになってくれるといいと思います。オリンピックにつながるように。
[谷原章介]
無事に初日を迎えられてホッとしたと同時に、僕たちが積み重ねてきたことがきちんとお客様に届いてうれしかったです。まだカンパニーの中で復帰していないメンバーもおりますが、早く全員一丸となって少しでも楽しいステージを届けられるよう頑張りたいと思います。
公演は12月30日(水)まで同劇場にて。2021年1月から長野、仙台、大阪、愛知で地方公演あり。
集合写真は12月19日(土)に行われたゲネプロ時のもの。(左から)谷原章介、高橋永、東山紀之、丹下開登、宮本亞門。
撮影◎引地信彦