小野 本当にステキだよね。
坂本 あと、黒執事の現場が初めてとは感じないぐらい、2人とも最初から馴染んでいましたね。不思議でした。
小野 2人が並んでいると、サリヴァンとヴォルフラムにしか見えないんですよね。この2人がいてくれてよかったなと思いますし、『緑の魔女編』のアフレコの空気感は、多分あの2人が作ってくれたと思いますね。
――梶さんは?
梶 …もうお二人が全部お話してくれちゃいましたね(笑)。
小野 じゃあ漢字一文字で!
梶 そうですね…。「良」ですね!
小野 はっはっはっは! 間違いないね。
梶 それぞれに関してはもう小野さんと真綾さんがおっしゃった通りなんですけど。そもそもこういう長くつづくシリーズに途中から参加するのって結構難しい中で自然に溶け込まれていて。黒執事ってシリーズごとに最適な空気感でアフレコができている気がするので、すごく楽しくて。コロナ禍を経て、みんなでまた収録できる環境が戻ってきている中で、本当に穏やかで落ち着いていて、温かくて居やすい空気感というのがあって。それはもちろん、親弘さんも釘宮さんもそういう空気感をお持ちだからこそなんだと思うんですよね。作品作りに集中できる現場だなというのを改めて感じました。
――2008年からスタートし、 16周年を迎えたアニメ『黒執事』。アフレコの空気感についてのお話もありましたが、アニメ初期の頃のアフレコ現場の空気や思い出はありますか?今との空気の違いや、逆に変わらないものがあるのか。
梶 変わりましたよね。
坂本 変わりましたね〜。
小野 みんなギラギラしていたと思うよ。
坂本 ふふふ(笑)。
小野 僕は単純に、“この作品で結果を残そう”と思ってギラついていた気がします。声優としても、座長としても。あの時ちょうど30歳くらいの時だったから。
梶 ちょうど30ですか? うわ…マジか。
坂本 若かったなって思う?
梶 はい。
小野 梶君もね?(笑)
梶 大先輩で、いろいろな意味で雲の上のような方々だと思っていた人が、あの当時 30歳だったんだっていう衝撃がありますね。今の自分よりも全然年下だったんだなって。僕は今年、40歳なので。
坂本 大人になったね〜!
梶 大人っていうか、もうおじさんなんですけど(笑)。
坂本 初期の頃は24歳くらいだったんだもんねぇ…。初々しかったですよ、梶くん。
梶 ふふ(笑)。真綾さんは特に、子供の頃からお仕事をされていてキャリアがものすごく長いこともありますし、当然小野さんも僕が出会った頃から活躍されている方なので、(小野さんとの)年齢差は7歳であっても、数字以上の差を感じますね。あの頃ド新人だった自分からすると、当たり前のように“この世界で活躍している人たち”っていう感じでした。なので当時30歳だったと聞くと、不思議な感覚があります。苦労も、覚悟も気合も…いろんなものを抱えていらっしゃったんだろうなと。自分も30歳というものを経てきた今、当時小野さんたちはすごくかっこよく先輩をしてくださっていましたし、今振り返るとすごく戦っていたんだろうなって思います。
小野 そうだね。今言った“ギラギラしていた”の正体はまさしくそれで。作品を成功させなきゃいけないっていう気持ちが先行して焦ってしまったり、戦わなくてもいいのかもしれないけど、常に何かに立ち向かっているような感覚がありましたね。「頑張って役をもっと良くしよう」って思えば思うほど、セバスチャン役としては空回りしてしまって、なかなか形にならなくて。常に足掻いてたような時期でしたね。で、その隣には真綾ちゃんがいて。真綾ちゃんって、やっぱり孤高の存在と言いますか。
坂本 ふふふ。
小野 梶君が言っていたように、真綾ちゃんは長いキャリアがあるし、それまでは現場で一緒になることも少なかったので、真綾ちゃんとどうやって関わっていけばいいんだろうって思っていた気がする。でも自分のお芝居で手一杯だったし、座長としてしっかり立たないといけない、背負わなきゃいけないと思っていたし…周りが見えてなかった部分もありました。そんな中で、周りのキャストがすごく僕を支えてくれたなって改めて感じます。梶君も含めてギラギラしたみんなと、この作品で何かを成し遂げようっていう思いがあったと思うな。
梶 そうですね。
小野 福山潤は特にそれが全面に出ていたから(笑)。だからこそ、「俺も負けるか!」と思ってアフレコに臨んでいましたね。福山潤もそうだし、立花(慎之介)くんも、周りは僕と同い年の役者も多かったのも大きかったかもしれない。安元(洋貴)くんもちょい上くらいだし。
梶 キャストのバランスも、当時の小野さんを思ってのものかもしれないですよね。
小野 そうだよね。僕が座長にいるからこのバランスになった。でもね、僕は真綾ちゃんと二人で座長だったと思っていて。
坂本 いや全然…私は逆にそういう意識が全くなくて(笑)。
小野 なかったんだ!(笑) すまんな、ずっとギラギラしている話を!
梶 はははっ。
坂本 違う違う! “小野さんが主役”っていう部分に甘んじて、自分が座長だとは全然思っていなかったんです。それよりも、男の子の役を演じることにあまり慣れていなかったから、みんなにヘタだと思われているんじゃないかって思いながら収録していて。誰の感想も聞きたくない!って気持ちで、毎回逃げるようにスタジオから帰っていたんです。
小野 帰ってたねぇ〜。
坂本 当時のメンバーがそれぞれ40代になったりして、そんなみんなが今も第一線で活躍していて、より一層パワーアップしているってすごくうれしいことだなぁって思った。あの頃のみんな、それぞれちょっと余裕のなかった私たちが、今は少しだけ余裕を持ってもう1度この作品と向き合えていることが、どれだけステキなことか。それに、単純に楽しめる感覚がどんどん増していることが自分としてもうれしいですし、みんなのお芝居が刺激になっています。だから私、今『黒執事』の現場に行くのがすごく楽しみなんです。
小野・梶 お〜!
小野 うれしいなぁ!
坂本 だから今、すごく幸せだなぁって思いますね。
小野 本当によかったぁ。