枢やなによる大ヒットコミック『黒執事』(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)が、再びテレビアニメシリーズに! 2024年、約7年ぶりに放送された新シリーズ『寄宿学校編』に続き、現在『緑の魔女編』が放送中。アニメシリーズスタートの2008年からセバスチャン・ミカエリス、シエル・ファントムハイヴ、フィニアンをそれぞれ演じてきた小野大輔、坂本真綾、梶裕貴の鼎談インタビューを実施。長きにわたって本作に携わっている3人の思い出トークは必見だ。
――『緑の魔女編』の放送に際し、皆さんがそれぞれ感じたことは?
小野 『寄宿学校編』で久しぶりにテレビアニメシリーズに帰ってきた時、これは僕たちにとってのご褒美だなと思いました。もちろんそれだけでもうれしかったんですけど、その先の物語となる『緑の魔女編』もできるということは、ご褒美以上のものがありました。まだこの先のエピソードをやることが決まっているわけじゃないけど、「君たちは一生、黒執事をやるんだよ」という使命をいただいたような感覚もあって、身が引き締まる思いでした。そして『緑の魔女編』は役者としてもいちファンとしても好きなシリーズなので、シンプルにうれしかったです。
坂本 『寄宿学校編』はいつもの黒執事とは雰囲気が違って、学園モノというか、新キャラクターもいっぱいいて、コメディー要素も多めなお話でした。対して、『緑の魔女編』はグッとダークな雰囲気を帯びて、“黒執事らしさ”を全面に感じるストーリーなので、久しぶりにシエルを演じる時にこの2つの物語をやるというのは、振れ幅があって面白いなと思いました。『寄宿学校編』では普段なかなか見ることのできないかわいいシエルや、好青年のシエルがいっぱい出てきて新鮮だったけど、『緑の魔女編』ではいかにも“シエルそのもの”という存在にプラスして、“もう1人のシエル”が現れるわけで。そこでどういうシエルを演じられるかを考えるのがすごく面白かったですね。
梶 前回のシリーズではご主人様たちが屋敷にいなかったので、我々使用人の出番は本当に少しだったんですけど。今回はいよいよ一緒に行動!というところで。原作を読んでいたので、『緑の魔女編』での使用人たち…特に、自分が演じているフィニアンの過去が分かるエピソードが展開されるということを知っていた分、いよいよアニメもここまでたどり着いたんだなという感慨がありました。それがとてもうれしかったですし、使用人たちには謎が多いので、みんなにどんな出会いがあって、どういう絆が結ばれているのかが分かる物語でもあるという意味で、個人的にも『緑の魔女編』の放送をとても楽しみにしていました。
――しかも、シエルとフィニアンの関係もしっかり描かれるということで。
梶 彼がなぜ坊ちゃんに対してあれだけの思いを持って一緒にいるのかが、すごく分かるドラマになっていると思います。
――セバスチャン目線、シエル目線で、『緑の魔女編』の見どころは?
小野 『緑の魔女編』には、自分が原作を読んでいたときから、呪いの影響で心が弱ってしまって復讐を放棄するシエルを契約違反だと魂を食らおうとするシーンをずっと演じたかったんです。このシーンでセバスチャンはシエルを試すというか…焚きつけるというか。 彼の魂を燃やさせるような、今までにないアプローチをする。そのシーンをきっかけに、シエルも一つ前に進む部分があるんです。ずっと“ビジネスパートナー”という形で接してきた中で、そんな風にシエルの気持ちを高ぶらせることはなかったんですよ。そういう意味で、セバスチャンが今まで見せてこなかった感情も出ていると思いますし、演者としてもそのシーンを演じたい気持ちが強かったです。そしてまた一つ、セバスチャンとシエルの関係性が深まるシーンになったんじゃないかなと思います。
坂本 私もそのシーンは印象的です。『緑の魔女編』において、“肝”となるシーンだと思います。これまでいろんな敵と戦ってきた二人が、今回はサリヴァンとヴォルフラムという、全く違ったタイプの主従関係を築いている二人と出会うわけで。彼らはお互いを思い合う気持ちがすごく強くて、家族のような愛情を持って接してきた子たち。だからこそ、お互い大事なことを口にするのを避けてきたというか、二人で闇に落ちていきそうな“危うさ”を持っているんですよね。一方でセバスチャンとシエルは、基本的にはビジネスパートナーで、食うか食われるか、お互いに弱みを握り合っているような二人。そういう関係ゆえの強さを持っているんですよね。愛情だけではカバーできない何かみたいなものがこの二人にはあって、それは他の組み合わせでは生まれない独特な絆だということを、『緑の魔女編』を通して感じて、改めて無敵だなと思いましたね。お互いのことを深く理解した上で痛いところをつける関係で、愛だけじゃないからこその強さがあるなと。
小野 今回は初めて失望を表現したんですよね。普通なら、失望を表現したら離れてしまうじゃないですか。それでも“この人は立ち上がってくる”と分かっていて、そんな厳しいこともできてしまうというか。確かに真綾ちゃんが言った通り、彼らにしかない絆が如実に表現されているエピソードだなと僕も感じます。