――奈央から見た里村の魅力、里村から見た奈央の魅力をそれぞれ教えてください。
山崎 奈央が里村に引かれたところは、自分にはないものを持っているところだと思います。奈央は0か100かという、極端で不器用な人。だから、里村にとってはコンプレックスなんだろうけど、誰とでもコミュニケーションを取れたり関係をつくれたりするところが奈央にはない部分であり、引かれたポイントかなと。それから、最初は里村のことを器用だと思っていたけれど、実は自分と同じように、自分の自覚している自分と、他人から見た自分のギャップに悩んでいるということに気が付いて、その悩みに共感したり、里村のことを本当に理解したりするうちに、里村への恋が愛になったのかなと思っています。
小関 里村から見た奈央の魅力も、自分と真逆なところだなと。年齢や立場関係なく、ちゃんと自分の意見を言えるところが里村にとって憧れだし、「そうなりたいな」「そんな自分であれたらいいのに」と思っていた奈央と思わぬきっかけで恋をするようになって。最初は“尊敬”が大きかったけど、デートを重ねて強い部分だけじゃなくて、弱い部分、不器用な部分も見て恋をしていくところで、憧れといとおしさが募っていく物語だなと演じながら感じていました。小関的には、里村が見ていないところでの表情や行動、心の声がすごくかわいらしくてキュンキュンしたし、面白かったし、リアルだったなと感じました。
――山崎さんのコメディエンヌぶりが発揮された作品だと思いますが、山崎さんは演じていて手応えはありましたか?
小関 手応えはありましたか?
山崎 手応えはないよ!(笑)
小関 アハハ! ないんだ!?
山崎 ないよ! 私の力だけではなくて、監督の素晴らしい編集や音楽の力もすごくお借りしているので、あまり自分が「やってやったぞ!」という気持ちはなくて。コメディーのお芝居は、リアクションを取ってくれる、一緒にお芝居してくださる方も大切だと思っていているので、みんなで協力してできた、という意識が強いです。
小関 僕は思いましたよ、「やってやったぞ!」って。
山崎 ありがとう!(笑)
――小関さんは、山崎さんの演技のどんなところがすごいと思いましたか?
小関 白目とかの表情も良かったですけど、ナレーションも素晴らしくて。テンポが良いし、声も聴きやすくて、ストーリーテラーというか本筋の進行として、すごく重みのある俳優さんだと思いました。それに、ナレーションはほぼ一発でとったんですよ! あれはイメージしきった状態で現場に入ったのか、現場に入ってその場でやっていたのか気になります。
山崎 ナレーションは段取りをして、その後に別室で録音してという流れでとっていました。自分でも「こうやったら面白いだろうな」というのを持って現場に行っていましたが、段取りを経て思い付いたこともたくさんありました。それに監督から「オタクっぽく、気持ち悪く」というオーダーを最初に頂いて。撮影も後半になると監督の好みもだんだんと理解してくるので、「たぶんこっちだろうな」と、より監督の好みのほうを考えて選択していました。でも、私は小関くんのお芝居を見て、緻密に計算し尽くされているなと思いました。
小関 恥ずかしっ!(笑)
山崎 私は感覚に頼ってしまうことも多いので、もちろん小関くんも現場からいろんなものを受け取っているとは思うけど、その部分は見習いたいなと思いました。
小関 どういうところがありました? 僕、あんまり考えてないかも…。
山崎 感情にグラデーションがちゃんとあるな、って。「この時はこう思っているんだろうな」というのが、どの程度見せるのかまで計算し尽くされているように、視聴者として感じました。
小関 めっちゃうれしいです!(照)
――お薦めのシーンは?
小関 奈央が部屋の中で干物を炙っているシーンが好きです(笑)。
山崎 そこなんだ!(笑)
小関 「こんなお酒の楽しみ方あるんだ!」って、普通に勉強になった(笑)。
山崎 確かに。あの炙るやつ、普通に欲しいなって思った(笑)。
小関 奈央がお酒をおいしそうに飲んでいるシーン、恋愛の部分とは関係ないですけど、奈央の本質を表していて良いシーンだなって思いました。ちょっとおじさんっぽいところ(笑)。
山崎 私は江の島デートですね。奈央も里村も純粋に楽しんでいるんだけど、「これで最後にしよう」って思っている奈央の心境を考えるとすごく切なくて。デート終わりのシーンは演じていてもすごく苦しかったシーンでした。キュンキュンもするし、切ないシーンでもあるので、お薦めです。
小関 奈央が「最後のデートにしよう」って思っていることを知らないからしょうがないんですけど、里村も一歩踏み出さず身を引いちゃう、要らない優しさを出してしまう。そういう意味では切ないシーンでしたね。あ、バスケのシーン、めっちゃ撮ったよね。