――板垣さんは?
板垣 僕は特に…(笑)。
細田 確かにあんまり何か言われていた印象がないなぁ。もしかしたら、それくらい達也だったのかもね?
板垣 どうだろう(笑)。でも僕は、とにかく現場では達也でいたかったので、あまり品川さんと話したくなかったんです。板垣としてはもちろん話したいですけど、達也的にはヒロシに上を取られるのは違うというか…(笑)。自分の中でそこは譲れなかったんです。板垣瑞生としては監督が言ったことをやっていきたいし、でも達也として「絶対に上を取られたくない」みたいな感じがあったから、品川さんもあんまり言わないでくれたのかもしれません。
――本編を視聴させていただいたら、やりとりがコントみたいですごく面白かったです。本当に素晴らしい会話の応酬だったのですが、あのテンポ感はどのようにつくったのですか?
細田 撮影前の本読みで、品川さんから全員に対してツッコミの仕方について言われたことがあるんです。特にヒロシは、周りに対してツッコんでいることが多いので、僕はそこを大切にしました。みんなそれぞれがコメディー作品を見てきているし、作品をやってきている人もいる中で、自分なりのテンポ感みたいなものがあったと思うんです。ただ、芸人さんがお芝居中でツッコむのと役者が普通にツッコむのでは、やっぱり芸人さんのほうがうまいんです。じゃあなんでうまく見えるかっていうと、そこにはだいぶテクニカルなところが関係しているという。そういったところを本読みの時に結構丁寧に教えていただきました。例えば、「なんでだよ!」って言うんじゃなくて、言葉の前に「ん」って入れるんですよ。「んなんでだよ」みたいな。そういうような…
板垣 ちょっと待って、今の声すごく品川さんに似てない!?(笑)
細田 似てるかな?(笑)
板垣 品川さんかと思った(笑)。ドキドキするわ~。
――お二人ともすごく役に説得力があり、ピッタリ過ぎてびっくりしたのですが、演じていてお互いに「役っぽいな」と思う瞬間はありましたか?
板垣 ずっとヒロシですよ(笑)。“ぽい”とかじゃなくてずっとヒロシ(笑)。
細田 え~?
板垣 初めて会った時の返しからヒロシですよ。割と最初のほうに「何こっち見てんだよ?」って言ったら、「えぇ…?」みたいな反応をして。それがめっちゃヒロシだったんですよ。
細田 いや、違うの! なんで「えぇ?」ってなったかっていうと、板垣くんがずっとこっち見てたから、僕も目を合わせてみたら「何こっち見てんだよ」って言われたから「え!?」ってなったの(笑)。
板垣 あははは! その「えぇ?」だったのか(笑)
細田 そうそう(笑)。でもマジでそういう意味ではヒロシだった。「いや、板垣くんが見てんじゃん!」ってツッコミを心の中でした(笑)。
――出会いからヒロシと達也だったのですね。
板垣 そうですね。
細田 対面に座っていて、ずっと見られているのが分かっていたんです。だから僕も見返したらちょっとニヤッとしながら「何こっち見てんだよ」って言われたから「え?」って(笑)。
板垣 そりゃそうなるなぁ(笑)。
細田 でも板垣くんも達也だったなぁ。アクションの多い作品なので、当然多少のケガは付きものなんですけど。例えば指を切っちゃったりしてばんそうこうを貼ってもらった時に、その貼ってもらったのを撮影が始まった瞬間に口でビッて外してたりするのはすごく達也だった。
細田 そういう動きは台本には書いていないし、その場で板垣くんがやったことなんです。ばんそうこうだってケガしなかったら付けていないし、それがすごく達也っぽいなってその時思いましたね。
板垣 僕自身はまぁいっかくらいの感じだったんです。ワン公とかも「おお、傷だなぁ」って感じの反応だったし(笑)。そしたらヒロシだけ気付いてなくて、テスト撮影の時に「ちょ、傷!!」みたいな感じになって。監督が「よーい!」ってなったタイミングで「傷! 傷です!!」みたいなストップをかけたんだよね(笑)。
細田 そう。「すみません、ばんそうこうありますか?」って(笑)。
板垣 そこもすごいヒロシだった(笑)。そして達也を演じている僕からしたら「何ばんそうこうとか言ってんだよ。こんなもんはすぐ取れちゃうんだよ」みたいな感じで。
細田 そういう思いだったんだぁ。すげぇなぁ。
板垣 でもあそこで佳央太が気付いて「ばんそうこうを」ってスタッフさんに言ってくれたから、「これ使えるじゃん」って思ってできた動きだから。無意識の連携が生まれた感じだよね。
細田 うん、うれしい。
板垣 だから“ぽい”というより「ヒロシじゃん」って感じ(笑)。
細田 「じゃん」だったんですか(笑)。
板垣 現場での出で立ちも、(品川)ヒロシさんの背中を見ているみたいな感じがしたもん(笑)。
細田 モデルとなっている監督が常にそばにいてくださるし、やっぱりその姿を見ちゃいますよね。寄せようとしなくても。