深作健太の演出で、ドイツの家族劇2作品「火の顔」と「アンティゴネ」を全く同じ出演者にて同時上演する「火の顔/アンティゴネ」が開幕。
川﨑星輝(少年忍者/ジャニーズJr.)が主演を務めるのは、2021年にも川﨑と同じ少年忍者のメンバーである北川拓実の主演で上演、ドイツ演劇界新進気鋭の劇作家マリウス・フォン・マイエンブルクが現代の不条理を描いた「火の顔」の再演だ。
芝居好きを公言し、ドラマや舞台出演時には丁寧な演技でそのポテンシャルをのぞかせてきた川﨑だが、主演は今作が初めてで、演じる主人公・クルトは相当な難役。しかし、研ぎ澄まされた演技と18歳になりたてのまっさらな輝きで、座長という大役を見事に務め上げていた。
父、母、姉のオルガとの4人家族で暮らすクルトは、「僕は自分が生まれたときのことを覚えている」と語り、大人になることを拒んでいるかのような少年。異常なまでに火に執着し爆弾作りに没頭する彼は、学校の教室に火を付けて顔に大きな火傷を負う。それでも火を恐れるどころか、学校を退学になり外界との接点を断たれた彼の火への執念はさらにエスカレート。全ての関係性が破綻した家族の中で、クルトとオルガの歪んだつながりだけが進行していくのだが…。
氷のような冷たさと燃え滾る熱さ、全てを放棄した空虚な瞳と狂気に憑りつかれ爛々と輝く瞳…。日常では決して見ることのない姿を、クルトとしてしっかりと見せつけた川﨑。母親に甘える顔、オルガの彼氏をせせら笑う顔、雄の色気を宿した顔、炎を見つめる恍惚とした顔など、次々と変化するその表情から目が離せなくなる。裸足の足先から目の奥の光まで、全てをコントロールしているような集中力と熱演に、観客は息をのみ、惹き込まれるのみだ。
カーテンコール、役を脱ぎ捨てて登場した彼は柔らかな微笑みで両手をフリフリ、いつもの顔に戻っていたことも最後に記しておく。この作品を体験した役者・川﨑星輝のこれからが、ますます楽しみだ。
■川﨑星輝(少年忍者/ジャニーズJr.)初日コメント
川﨑星輝です! ついに初日を迎えます。
ドイツ戯曲とは何か、という所から始まった稽古期間。
戦争、文化、少し刺激しただけで爆発してしまう程、繊細な家族を考え続けた1ヶ月でした。
何故僕達は今、暴力に関する演劇を上演するのか、この舞台を通して是非皆様と一緒に考えたいです。僕の新しい一面、これからの可能性を見て頂けるよう全力で挑みます!
劇場でお待ちしてます!
■「火の顔」STORY
どこにでもいる、普通の四人家族。父は現実から目を背け、母は自らの母性をアピールする。姉は外の世界へ出る事を夢見て、弟は爆弾作りに没頭する…。そこへ突然、現れる姉の恋人。閉ざされた家庭に、新しい風が吹き込んだ時、思春期の少年に渦巻いていた<炎>は、音を立てて燃えあがる。
【公演情報】
2023年4月8日(土)~4月16日(日)
会場:吉祥寺シアター
<出演>
「火の顔」
川﨑 星輝(少年忍者/ジャニーズJr.)、富田健太郎/葉山 昴(ダブルキャスト)、大浦 千佳/小林 風花(ダブルキャスト)、宮地 大介、愛原 実花
「アンティゴネ」
大浦 千佳、宮地 大介、富田健太郎、小林 風花、葉山 昴、愛原 実花、川﨑 星輝(少年忍者/ジャニーズJr.)
<スタッフ>
作:『火の顔』マリウス・フォン・マイエンブルク
『アンティゴネ』ベルトルト・ブレヒト
翻訳・ドラマトゥルク:大川珠季
演出:深作健太
◆公式WEBサイト hinokao-antigone.fukasakugumi-map.jp
◆Twitterアカウント @hinokaoantigone
【写真クレジット】
「火の顔」より ©阿部章仁