朗読劇『武士とジェントルマン』が、2月1日に東京・サンシャイン劇場で開幕した。
本作は、榎田ユウリのデビュー20周年記念作品の小説「武士とジェントルマン」を朗読劇にしたもの。
大学講師として来日した英国人のアンソニーと、居候先のキモノにカタナ、チョンマゲという現代日本においてまさかの出で立ちで生活する日本人青年の隼人が織り成す“異文化交流”を会話劇で描く。
物語は、日本の大学で講師として勤めるために来日した英国人のアンソニーが、イギリスの恩師が手配してくれた居候先の青年の隼人と出会うことからスタート。現れたのは、刀にチョンマゲ姿の武士だった。現代の日本に武士がいるのか!?と驚くアンソニーに、隼人は「伝統文化の保持並びに地域防犯への奉仕を目的とする新しい武士制度」として現代の武士が存在する(らしい)ことを告げる。こうして、英国紳士と青年武士の不思議な同居生活が始まった。
出演は、人気声優たちが日替わりで登場する。隼人役を汐谷文康、千葉翔也、中島ヨシキ、狩野翔、堀江瞬、中澤まさともが務め、アンソニー役を岸尾だいすけ、笠間淳、神尾晋一郎、松風雅也、安元洋貴が演じる。なお初日の舞台稽古には、汐谷、岸尾、持月、朝倉が出演した。脚本・演出は劇団おぼんろの末原拓馬が務める。
全編を通し、アンソニーと隼人が心を通わせていく姿が丁寧に描かれた本作。2人の日常、友情がつづられる中で、家族について、友人について、それぞれの悩みや傷も少しずつ明らかになっていく。決して世界を揺るがすような大きな事件が起こるわけではないが、隼人にとって人生を変える出来事がいくつも起こり、日常が少しずつ変化していくさまが写し出されていく。
そうした物語を、尺八、三味線、ピアノの生演奏が優しく包み込む。生演奏が入るのは今回が初めてのこと。冒頭から美しい尺八の音色が響き、観客を物語にいざなう。時にポップに、時に不穏に、時に壮大な音楽が奏でられ、本作の世界観がより深みを持って届く。
また、ステージ上に配された5つの木のフレームと灯籠も観客を引き込む重要なファクターになっている。それは、それぞれのシーンの風景を想起するために使われるだけでなく、幻想的なステージを作り上げる一助にもなっている。抽象的でありながらも想像力を刺激 するステージ上をキャストたちが動き回って朗読するため、視覚的にも楽しめる公演になっている。
胸が締め付けられるシーンがありながらも心が温まり、クスッと笑えて、日本の心まで再発見できる。極上のカルテット朗読劇をお見逃しなく!
公演は2月5日(日)まで同所にて。
©榎田ユウリ/KADOKAWA 朗読劇『武士とジェントルマン』製作委員会