東野圭吾の「手紙」を原作に横内謙介が脚本・演出を手掛け、ふぉ~ゆ~の福田悠太と越岡裕貴、室龍太、高田翔が出演する朗読劇『手紙』が、9月16日に東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで開幕した。
今回の朗読劇『手紙』は、ある相手宛てに弟・直貴がつづった手紙を軸に、強盗殺人を犯して刑務所へ入ることになった兄・剛志から届く手紙や、兄の罪によって直貴の人生に起こるさまざまな出来事を二人が朗読で進めていく。
それぞれの「大切な人への手紙」を通じて、日常生活を送る直貴の環境や気持ちの変化と獄中で変わることのない日々を送る剛志の様子が、直貴の主観を時折交えながら丁寧に描かれている。福田と高田、越岡と室の2組が4公演ずつ交互に作り上げる、濃厚な時間が楽しめる朗読劇となっている。
公演初日は、福田と高田が出演。弟への熱い気持ちを秘める不器用でぶっきらぼうな兄・剛志像を作り上げる福田、大切な人を守ろうとする強さの中に寂しさをにじませる弟・直貴役の高田の朗読は、各々が過ごした時間の違いがひしひしと伝わる内容で観客から大きな拍手が寄せられた。
続く17日の昼公演には、越岡と室が登場。弟思いで少し世間知らずな雰囲気を持つ兄・剛志役の越岡と、兄の罪によって事あるごとに何かを諦め続けてきた弟・直貴の優しさと切なさを感じさせる室。それぞれが発する言葉の数々は福田・高田ペアとまた異なる印象を残し、こちらも客席から大きな拍手が送られた。
同じ原作・脚本ながらも演じる二人によってつくられる別々の空気感や世界観もまた、今回の朗読劇『手紙』の大きな魅力となっている。
公演に臨んだ4人がコメントを寄せた。なお、公演は9月20日(月)に終了。
[福田悠太コメント]
コロナ禍の中で、無事に初日を迎えられたことは奇跡に近いことで、当たり前じゃないって常に思っていて、改めて大事にしなきゃいけないっていう思いが強いです。うわさでは聞いていたけど、朗読劇は稽古期間が本当に短い(笑)。横内さんは役者に委ねてくれる方で、僕が思ったことをまずはやって、これはいいねってこともあるし、別の方向もやってみたらってアドバイスを頂いて、実践したら面白くなったりして。あと、横内さんご自身が楽しんでいらっしゃるのが印象的でした。今回、この朗読劇だからこそ味わえる「手紙」という作品の奥深さ、人間が持っている感情が見られますし、ストーリーは小説と一緒だけど、ここならではの『手紙』になっていると思います。もちろん、「手紙」を読んでいなくても、世界観が十分楽しめる作品です。
[越岡裕貴コメント]
初めて朗読劇を見るという方もいらっしゃるので、朗読劇を知ってほしいし、動きが制限される分、声だけのお芝居や声色で心境を伝える難しさを感じながらも、どう届くかが楽しみです。僕は朗読劇が初めてなので、新しい自分を見せることができるんじゃないかなって思ってます。横内さんは懐の深い人で、否定されたことがないんです。つかこうへいさんが根本って伺って、ふぉ~ゆ~の初主演舞台を演出していただいた錦織一清さんもつかさんイズムをお持ちの方でしたので、割と横内さんと共通点があって、勝手に親近感を感じていて、朗読劇じゃない演出も受けてみたくなりました。「手紙」という作品自体、自分に起こりそうで起こらなさそうな、すごくリアルな話なので、自分が生きてきた中の何かに照らし合わせることができるのかなって思うんです。この朗読劇ならではの視点で「手紙」を描いているところも魅力的なので、その世界観を楽しんでほしいです。
[室龍太コメント]
今回の見どころは、同じ作品なんですけど、それぞれのチームで雰囲気が別物になるところだと思います。こっしゃんさん(越岡)と僕のペアは、『ッぱち!』で培ってきた雰囲気が『手紙』の兄と弟のときに、ちょっとした空気感みたいなものとして出ていて、楽しんでいただけるんじゃないかなって。横内さんは初めましてだったんですが、役者に寄り添ってくれる方で「ここをこうしたらいいと思うんだけどどう思う?」と聞いてくれたりするところが印象的でした。まだ厳しい状況の中で、劇場に足を運んで見に来ていただけるということに心から感謝してますし、この作品から何かを感じ取って、自分の中でプラスになってもらえたらいいなって思ってます。今は携帯で何でもできる時代ですけど、手紙って素晴らしいものだなって気づいて、手紙を書いてみようかなって思ってもらえるとうれしいです。
[高田翔コメント]
朗読劇『手紙』の稽古中は、自分の中でどんどん内に入ってしまう感じがあって、それをどう脱却するかを考えながら取り組んでいました。演出の横内さんは優しい方だし、実際に稽古をしている時に福田くんのお芝居で普通に笑っていたりするんです。あと、声が良くて心地いいなって。だからダメ出しもスッと聞けます(笑)。「手紙」を朗読劇で届けるという部分はもちろん見どころですし、舞台上は直貴の家の周りが鉄格子で囲われているという、今回ならではの考えさせられるセットになっています。今、手紙を書く習慣があまりないですけど、手紙が大きなテーマになっている作品なので、見たお客さまはきっと誰かに手紙を書きたくなるんじゃないかなって。僕自身も手紙っていいなと思いましたし、ぜひ見に来ていただけたらと思います。
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