2010年に死去した劇作家・つかこうへいの命日にあたる7月10日に、没後10年追悼イベント「朗読 蒲田行進曲完結編『銀ちゃんが逝く』」が、東京・紀伊國屋ホールで開幕。初日公演を前に、公開ゲネプロとキャストによる舞台あいさつが行われた。
同作は1980年に発表された、つかの代表作の一つ『蒲田行進曲』の完結編。当初は「追悼演劇祭」の一環として1カ月公演を予定していたが、新型コロナウイルスの影響を受けて、いったんは公演の中止が検討されていた。その後、世の中の動きや感染予防のガイドラインを鑑みて、演出の岡村俊一らの“何らかの演劇を届けられないか”という思いから、つかの10回目の命日に3日間の朗読劇を行うことを考案した。朗読の稽古を6月の半ばから始めたそうだが、岡村は「6月末には8割が朗読ではなくなってしまった。俳優の持つ力のすごさ、戯曲の持つ力の恐ろしさですね」とイベント実現までの経緯を振り返った。
この日行われた公開ゲネプロでも、朗読シーンはあるものの、倉田銀四郎役の味方良介、小夏役の井上小百合、ヤス役の植田圭輔、中村屋喜三郎役の細貝圭らキャストが迫力満点の演技を披露。植田と味方が、クライマックシーンの“階段落ち”を実際に演じるなど、内容は演劇そのものだった。
公開ゲネプロの前には舞台あいさつが行われ、味方、井上、植田の3名が登壇。つかの『熱海殺人事件』にも出演経験のある味方は、第一声で「泣きそうです!」と声を震わせ、「ここに立てて幸せです。『蒲田行進曲』を紀伊國屋でやれて本当にうれしい。僕らの力で、お客さんにどう届くか楽しみ。『蒲田行進曲』を作ってきた人たちの思いに恥じぬよう120%でやっていきたい」と思いを語った。
公演は7月12日(日)までだったが、好評のため7月23日(木)26日(日)まで同所での追加公演が決定した。