ドラマ

椎名桔平「連続ドラマW 事件」インタビュー

不朽の名著「事件」が、令和を舞台に法廷サスペンスドラマとしてよみがえる! その主人公で、元エリート裁判官の弁護士・菊地大三郎を椎名桔平が演じる。「リアルな感情をぶつけ合った」というこの物語は、私たちにどんな思いを抱かせるのだろうか。

――原作の小説があり、映画化、ドラマ化もされている本作ですが、そこへの意識はありましたか?

今回は全くと言っていいほど、別ものだと考えていました。というのも、今回は舞台を令和に移していて、時代背景が原作やこれまでの映像作品とは違うので。脚本を読んだ時には、本当に緻密に構成された原作を、裁判員裁判や少年法が改正される中で、現代に合わせて、現代に求められるエンターテインメント性を考慮した上で脚本化されていて、面白いなと思いました。

――原作の舞台では存在しなかった裁判員裁判では、弁護の仕方も変わってくるのでは?

やっぱり違いますね。特に主張したいことは裁判員に向かってアピールしないといけないので、舞台上にいるような感覚になります。芝居がかって「ここをよく聞いてくださいよ」というような訴え方をするわけですから。水田(成英)監督から「このシーンでは裁判員を味方に付けるような言い方で」といった演出をしてもらうこともありました。

――ご自身が演じる役への印象を教えてください。

過去から今まで払拭し切れないものがあって、それを乗り越えていくという再生物語的な側面もこのドラマにはあって。この事件を起こした人間だけでなく、誰もが間違いや悔やみを抱えて生きていくわけじゃないですか。過去をああだこうだ言うことは簡単ですけど、言ってても仕方がないということにはなかなか気づかないで、一歩が踏み出せないのが人生なんだろうなと考えさせられます。それは、僕が演じる菊地も同じで、5年悩んでいるわけです。「人を裁くのはまっぴらだ」と思っている人間が、ある少年の弁護をしていく中でいろいろなこと想起しながらも、過去のトラウマを完全に忘れることはないにせよ、いつの間にか乗り越える経験をしていく姿をぜひ見ていただきたいです。

――元裁判官の弁護士という役を演じるに当たり、実際にその職業に就いている方にお話をお聞きになったそうですね。

その職業に就いている方とお会いする機会が少ないと、その職業に対して自分の既成概念でイメージをつくってしまうことが心配です。弁護士はきっちりとしていて堅く、冷静沈着。裁判官はそれに輪をかけたようなイメージでした。これまでお医者さんの役を何度かやってきて、同じようにお医者さんに話を聞くと、先生によってもキャラクターが違いますし、気さくに接してくださることが多くて。だから、お話することによって既成概念を取っ払おうという狙いもありました。実際、お会いした裁判官の方の、話し方の雰囲気や物腰は自分の中に取り入れていきました。それに加えて、古い友人の中に弁護士がいて、彼にも夜な夜な質問メールを投げ掛けては答えてもらっていました。しっかりと誤解のないよう配慮した友人の答え方に、職業が持つ責任にも触れたような気がします。

――この作品の印象的なシーンを教えてください。

かつての上司でこの裁判の裁判長から告げられた言葉を分かっていても消化できないでいた彼が、同じ言葉を裁判員や傍聴者に向かって発するシーンですね。その言葉は自分に対しても、少年に対しても言っていて、それと同時に後ろの裁判長に対して「僕はやっと自分の口からこの言葉を言えるようになりましたよ」という恩返しでもあって。それが印象的ですね。

――撮影での印象深いエピソードは?

このドラマの一番の見どころが法廷シーンだと思うのですが、本当にリアルに作られていて。僕が傍聴に行った霞が関の法廷よりも本物なんじゃないかと思うくらい(笑)。そんな美術さんの力作のセットで演技をする役者さんも、その役の人にしか見えなくて。準備期間の中で、皆さん分厚い原作を読んで、映画を見返して、「令和に置き換えた世界観ならどうしようかな」「どんな言い方をするだろう」といろんなことを考えているから、皆さんの芝居も面白くて、それを受け止めて、今度は相手に芝居をどう投げ返そうというのがいろんなところで起こっていくんです。そんな、リアルとしか思えないセットでリアルな感情をぶつけ合えたのはうれしかったです。

――役者冥利に尽きる現場だったのでは?

そう言えますね。でもセリフ覚えるの、大変でした。勉強でこれだけ覚えられたら、もっと成績が良かったんじゃないかと思います(笑)。

連続ドラマW 事件

WOWOWプライム・WOWOW4K・WOWOWオンデマンド

毎週日曜 後10.00~11.00(全4話)

※第1話は無料放送

Profile

しいな・きっぺい 1964年7月14日生まれ、三重県出身。主な出演作に映画『仕掛人・藤枝梅安』『沈黙のパレード』舞台「オリエント急行殺人事件」など。

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