2010年7月10日、偉大な劇作家のつかこうへいさんがこの世を去った。あれから12年。
22年の夏、12年間続いていた追悼公演も十三回忌を終えて一つの節目を迎えた。
しかし、演劇界におけるつかさんの輝きはいまだ衰えることはない。23年新春、本拠地の新宿・紀伊國屋ホールにて「つかこうへい復活祭2023『新・幕末純情伝』」が上演される。
『幕末純情伝』は幕末の京都を舞台に新撰組の沖田総司が実は女だったというユニークな着想の下、89年8月にPARCO 劇場にて幕を上げた。それ以降『熱海殺人事件』『飛龍伝』 と並ぶつかさんの代表的な作品として愛され、これまで幾度となく上演され続けている。
この『新・幕末純情伝』に、女性は一人しか登場しない。つかさん独特の論法「女、恋に狂わば時代を覆す」というテーマが壮大な物語を突き動かしていく。
歴代の沖田総司には、牧瀬里穂、広末涼子、石原さとみ、鈴木杏、桐谷美玲、松井玲奈などそうそうたる女優が並び、伝説ともいえる歴史をつくってきた。
今回、沖田総司の11代目を務めるのは欅坂46、櫻坂46 のキャプテンを歴任し、今年11月9日に東京ドームでの櫻坂46 ツアーファイナル公演にて卒業したばかりの菅井友香。グループ卒業後、第一弾の晴れ舞台となる。
菅井は3年前、『飛龍伝2020』のヒロイン・神林美智子役で熱演、振り切った演技で高い評価を得た。
つかこうへい作品の2大ヒロインといわれる沖田総司と神林美智子の両方を演じたことがあるのは、長い歴史の中で広末と桐谷の2人だけである。菅井は3人目の歴史的ヒロインとなる。
今回、菅井を支えるべくフレッシュな共演者が顔をそろえた。
NHK 朝ドラ『エール』で鮮烈な印象を残して『新・信長公記』では今川義元役を演じた松大航也、つかこうへい十三回忌特別公演『初級革命講座飛龍伝』で主演を務めた高橋龍輝、モデルとして世界で活躍して今回初舞台に挑む晃平、「仮面ライダーリバイス」(テレビ朝日系)オルテカ役で注目を集めた関隼汰、22年度関西演劇祭でベストアクター賞を受賞した北野秀気など、多彩な分野から紀伊國屋ホールに集結して幕末メンバーを一新。北区つかこうへい劇団の重鎮、吉田智則が歴史をつなぐ。
演出には、日本エンターテインメント演劇の巨匠の岡村俊一が、9代目の松井以来7年ぶりに指揮を取る。当時「もう松井以外では上演したくない」と発言していた岡村が「菅井友香なら演じられる!」と闘志を燃やしている。
没後13年を迎える23 年、つかさんの熱く日本を見据える作品は色あせることなく俳優たちに、観客たちに受け継がれていくことであろう。今なお、かつて、つかさんの影響を受けて第一線で活躍する俳優は数多い。23年もきっと、『新・幕末純情伝』からまた、日本を代表する俳優が生まれる。
公演は2023年1月28日(土)~2月12日(日)まで東京・紀伊國屋ホール、2月17日(金)~19日(日)兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeにて。