7月20日からスタートするドラマ「家庭教師のトラコ」(日本テレビ系)で“合格率100%の伝説の家庭教師”寅子を演じる橋本愛。訪問先の家庭によって風貌もキャラクターも変える、謎多き寅子という人物をどのように考え、どう演じようとしているのだろうか。
――「同期のサクラ」「35歳の少女」(共に日本テレビ系)に続き、脚本家の遊川和彦さん・大平太プロデューサーとのタッグになります。
遊川さんと大平さんが作られる作品に参加させていただくのは3回目で、すごく安心感があります。全く初めての方々とご一緒するのとはちょっと違って、より気兼ねなくいろんな意見を交わせそうだなって。遊川さんご自身も、描きたいものがはっきりされている方で、「最近、意見をあまり言われなくなってきたので言ってください!」ということもおっしゃっていて。だから私自身の感性で、気になったことはどんどん投げ掛けて、作品をよりよくするためのやりとりを今までで一番していますね。このドラマも他の遊川さん作品同様、「家庭教師の話」と一まとめにできないくらい、すごく多角的にいろんなことが描かれているんです。その中で寅子さん自身も人として成長しながら、寅子さんによって周りの世界や触れ合う人たちの心なのか環境なのか、何かが変わっていくというストーリーが、誰かにとっての希望になってくれるような気配がしています。
――今回は家庭教師の役です。
私自身は家庭教師の方に教わったこともお会いしたこともないので、あまり想像がつかなくて…。でも今回のお話ですごく面白いなと思ったのは、一般的な“家庭で教える先生”っていう側面ももちろん寅子にはあるんだけど、実は“家庭の教師”だということ。家庭や家族に対して、寅子が「こうしたほうがいいんじゃないか」と思ったこともアプローチをかけていく側面がすごく面白いなと思っていて。だからいろんな意味での“家庭教師”ですし、こんな人がいたらいいなって思ってもらえるような人になりたいですね。
――“家庭の教師”を演じるに当たり、役作りのためにしていることはありますか?
今(取材日は5月中旬)は、わざわざキャラクターを変えてまで各家庭にアプローチする寅子の原動力や、それによってどんな効果を得たいのか、どういう目的があるのかというところを掘り下げている最中です。
――寅子は教える家庭によってキャラクターや衣装を変えていきます。外見からのアプローチについてはどう考えていますか?
寅子はいろんなキャラクターに変身・変貌して、それに伴って全く違う先生像を立ち上げていきます。外見からのアプローチは、とても面白いなと思いました。それと衣装。服ってこんなに力を与えてくれるんだなっていうのは、ものすごく感じていますね。着るだけで勝手に引き出されるものがあるというか…。外側から骨格を作っていくだけで、中身が勝手に入れ替わる感じを今回目まぐるしく味わえています。衣装も寅子のキャラクターもどんどん変わるので、どれが本当の寅子なのか、これは演技なのか演技じゃないのかとか、すごくいろんな解釈の余地が生まれるだろうなと予感しています。
――キャラクターが変わる中で、どこに重点を置いているのですか?
一番大事にしているのは、寅子自身が抱いている「怒り」の感情ですね。これは、彼女の生い立ちやこれまでの人生が深く関係していて、彼女をむしばむものでもあるし、これがあるから生きられると言ってもいいくらい大事なものでもあります。それが原動力にあるからこそ、何かを変えたいという思いで家庭教師をしているんじゃないかな。ただ私自身、普段から怒りという感情をなるべく遠ざけるようにしているので、共感して一体化するのに時間がかかりました。でも今は、そうすることでしか生きられない彼女のことを、すごくいとおしく思います。物語が進むにつれて、いつか寅子の本当の目的や野望が明かされた時、やっと胸の内を誰かにさらけ出すことができるのかな。少しでも救われてほしいなと思っています。
――今作の中で、いろいろなキャラクターを演じる醍醐味は?
お芝居としては毎作品ごとにキャラクターが違うので、やることはいつもと変わらないです。でも、どのキャラクターも核となる部分や原動力など根本が一緒なところは他の作品と違うところですかね。違うキャラクターでも根本が一緒だったら、何が出てくるのかは演じてみて初めて知るのですごく楽しみですし、見てる人にもいろんなキャラクターのコントラストを感じてもらいたいです。“本当はどういう人なんだろう?”って思ってもらえたらすごくうれしいですね。
――それぞれのキャラクターをどのように作っていこうと考えていますか?
まだ自分の中で確固たるものにはなっていないんですけど、各家庭のお母さんにちょっと似たところがあるキャラクターになると思います。お母さんの良いところや特徴を受け継いでるような。だから実際のお母さんを演じる俳優さんにお会いした時に、その方々が演じられるお母さん像、お母さんの人間性や癖などを吸収できると面白いんじゃないかなと今の段階では考えています。見てくださる方によっていろんな解釈や想像の余地があるところも面白いなと思いましたし、本当の寅子に出会うのが私自身もとても楽しみですね。
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