多くの名作戯曲を生み出し、トニー賞、オリビエ賞など多くの賞を受賞して、英国演劇界を率引する劇作家サイモン・スティーブンス。彼の代表的戯曲「真夜中に犬に起こった奇妙な事件」(2014年)に主演し、その演技が高い評価を得た森田剛が、再びサイモン・スティーブンス作品に挑戦する。2020年1月に東京芸術劇場プレイハウスにて上演が決まったPARCO PRODUCE 2020「FORTUNE(フォーチュン)」。ヨハン・ボルフガング・フォン・ゲーテの代表作「ファウスト」を題材に、サイモンが大胆にも現代のロンドンを舞台に置き換えた意欲的な新作だ。しかも本作はなんと英国に先駆けて、日本で世界初上陸を果たす。
演出を務めるのはショーン・ホームズ。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーを皮切りに、ドンマー・ウエアハウスやオールド・ビック・シアター、ロイヤル・コート・シアターといった英国有数の劇場で数々の作品を手掛け、2009 年から約10 年間、英国を代表する劇場であるリリック・シアターの芸術監督を務めた。
(ストーリー)
映画監督として成功を修めたが、自分を幼い頃に捨てた父親とその自殺という事象から常に喪失感を抱えて生きているフォーチュン。自分に対して素直に意見をぶつけてくる若きプロデューサーのマギーに好意を抱くが、彼女は幸せな結婚生活を送っていた。欲しいものが手に入らない焦燥、そして逃れられない悲しみから、出会った女ルーシーに誘われるまま、半信半疑である[契約]を交わしてしまう…。
主演の森田剛は、「真夜中に犬に起こった奇妙な事件」では数学に天才的な才能を持つ15歳のアスペルガー症候群の少年を演じきった。本作では、過去の出来事から喪失感を抱えて生きながらも、恋人・財産・名誉と望むもの全てを手に入れるために悪魔と[契約]を結び、闇へと堕ちていく二面性を持った主人公の映画監督・フォーチュンを演じる。
注目の共演陣は、フォーチュンが思いを寄せる、若くして結婚しているプロデューサーで、素直で真っすぐな女性・マギーには映画・ドラマで注目を浴びる吉岡里帆、すべてを手に入れたいフォーチュンと契約を交わす悪魔・ルーシーに存在感・実力共に高く評価される演技派女優・田畑智子、フォーチュンの母親・キャサリンに映像・舞台と多方面で活躍し、唯一無二として演出家からの信頼も厚い根岸季衣、自殺したフォーチュンの父親・ショーンには年齢と共に魅力を増す演技を見せつける鶴見辰吾。さらに市川しんぺー、平田敦子、菅原永二、内田亜希子、皆本麻帆、前原滉、斉藤直樹、津村知与支と、個々に強烈な個性溢れる魅力的なキャストがそろった。
森田剛と吉岡里帆が、本作へ臨む思いを語った。
[森田剛コメント]
「夜中に犬に起こった奇妙な事件」に続いて、サイモン・スティーブンスの戯曲に挑むことになりました。しかも今回は新作ということで、とても光栄に思います。「夜中に~」は、リアルとファンタジーが入り混じりながら、一人の男がいろいろな人たちと関わっていくことで成長する様子が描かれた物語でしたが、この「FORTUNE」を初めて読んだとき、似た感覚を持ちました。今回も、僕が演じるフォーチュンが人と関わることで物語が動いていくのですが、「夜中に~」と違うのは、何不自由のない成功者が落ちていく、ということ。「ファウスト」をベースにしているそうですから当然ですが、正直、最初は少し抵抗がありました。それに、サイモンの戯曲は精神的に強く揺さぶられるので、前回とても苦しんだことも思い出し、そこにまた飛び込むことにも勇気が要りました。ただ同時に、幕が開いた瞬間になぜかすべて報われた感覚も経験したので、今はそれをもう一度味わってみたいという気持ちが強くなっています。
[吉岡里帆コメント]
世界的に活躍されているイギリスの劇作家、演出家、美術家のお三方が、この日本で手掛けられる世界初演の舞台。このようにスケールの大きい舞台に立たせていただくこと、とても光栄です。まだ26歳の私を起用していただいたことを、素直にうれしく思います。私が初めてお芝居に触れたのは、小劇場の舞台。それだけに舞台への憧れは強く、だからこそプレッシャーにも感じています。
この戯曲には、演劇でしか伝えられないような大きなテーマが描かれています。読めば読むほど、心も身体も全部この作品に注ぎ込みたいと思いました。このような作品に参加させていただけることは本当にぜいたくで、とても幸せです。
PARCO PRODUCE 2020「FORTUNE(フォーチュン)」は、2020年1月14日(火)~2月2日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて(1月13日にプレビュー公演あり)。
以降、松本、大阪、北九州でも公演あり。