――そう考えると、このホーチミンの旅は、カオルにとってどんなものだったんでしょうね。
率直に言えば、自己満足でしかないと思います。でも、人生において自己満足ってすごく大事。彼女が新しい道を踏み出すためには、この自己満足が必要だった。そう考えています。
「私の旅の思い出は、イタリアで聞いた12時の鐘の音」
――ロケ地となったホーチミンについてのお話も聞かせてください。
現場を手伝ってくださった現地のスタッフの方がいたんですけど、皆さんすごく優しくて。こちらに対する気遣いの一つ一つに優しさがにじみ出ているというか。私もこんなふうに優しくなれたらなと思うぐらい、みんないい人でした。
――特に印象的な現地の思い出は?
もうクラクションがすごくて。昼夜問わず、「何かしましたか?」っていうぐらい、ずっと鳴ってるんですよ(笑)。でもだからと言って撮影を止めるわけにはいかないし。日本では考えられない量のクラクションが鳴っている中でお芝居をするというのは、何だか新鮮でおもしろかったです(笑)。
――やはり日本と海外では違いを感じますか?
すべてが違いますね。言葉も通じませんし、飲み物も食べ物もみんな違う。その中でお芝居をするわけですから、お芝居だって変わってきます。だから、今回はとにかくこのホーチミンの空気とか風とか街とか人とかをちゃんと感じてお芝居をしようって、そのことを一番に心掛けていました。
――では、最後に尾野さんご自身の思い出深い旅のお話を聞かせてください。
私、初めての海外がイタリアなんです。トリノ映画祭に参加するために現地へ行って、それが初の海外。それまでずっと英語もできないし、言葉も通じないから、日本から出るのが嫌で、海外に興味を持ったことがなかったんですよ。
――初めての海外が、その苦手意識を変えたんですね。
現地でマネージャーと一緒に御飯を食べていた時のことなんですけど。12時になるのと同時に街中に鐘の音が鳴り響いて。ただそれだけなんですけど、街の雰囲気にもぴったりで、すごくすてきに思えたんです。そこからいろんな文化を見たいなと思うようになって、海外にも興味を持ち始めるようになりました。今でも気が向いた時にぷらっと行くぐらいで、旅にそこまで関心がある方ではないんですけど、私の中で思い出の旅といえば、イタリアのあの鐘の音を思い出しますね。
WOWOW・TBS・テレビ東京 3局横断 Paraviオリジナルドラマ「tourist」
第3話ホーチミン篇
WOWOWプライム 10月7日(日)深0.30~1.30 ※無料放送
写真提供:Paravi
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