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「Wakana Anime Classic 2021」大阪公演レポート!クラシックホールに柔らかくしなやかな歌声がふわりと響く

「夢の中にいるように、気持ちがよかったね」。終演後のロビーで、今回のライブTシャツを身にまとった男性がつぶやいていた言葉を聞き「本当に」と思った。10年を越えるキャリアを下地に、2019年にソロシンガーとしてデビューを果たしたWakana。昨年12月、珠玉のアニメソングにクラシックアレンジを施し歌唱したカバーアルバム「Wakana Covers ~Anime Classics~」をリリースし、「Wakana Anime Classic 2020」と題したライブを東京・紀尾井ホールにて開催。この夏、2回目となる「Wakana Anime Classic 2021」を大阪・東京の2カ所で開催することになった。8月15日、住友生命いずみホールで開催された大阪公演の模様をレポート。荘厳なクラシック音楽専門ホールを舞台に、歌声を響かせた約2時間をお届けしたい。

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会場である住友生命いずみホールは、舞台奥に鎮座するパイプオルガンやきらびやかな8基のシャンデリアが素晴らしいクラシック音楽に特化したホールだ。何でも、1.8〜2秒というクラシック室内楽にふさわしい残響時間が実現できるようホールの設計も計算され尽くしているという。午後3時オンタイム、橋本しん(Sin、音楽監督、P)、室屋光一郎(V)、結城貴弘(Ce)に続いて、純白のロングドレスに身を包んだWakanaが大きな拍手に迎えられて登場した。両手を大きく左右に広げて一礼した後、ライブのオープニングとして『魔女の宅急便』より「やさしさに包まれたなら」、『天空の城 ラピュタ』より「君をのせて」というジブリ映画を代表する人気の2曲を披露。温かで伸びやかな彼女の歌声が、このホールが誇る高い天井から降り注いでくるようで、ライブ開始早々うっとりとしてしまう。

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「大阪の皆さんお久しぶりです。昨日から雨がすごく降っていて…無事に皆さんが来られてよかったです。今日はアニメの名曲、そして心の中の思い出の曲もお届けできるかもしれません。最後までよろしくお願いします」とのあいさつを挟み、次の曲へ。歌声を聴いていると、少し憂いを含んだ夏の日の情景が目の前に広がっていく。会場に漂う余韻の中、Wakanaの独唱で始まったのは「風のとおり道」だ。『となりのトトロ』の劇中で、トトロが夜に空を飛ぶ印象的なシーンで流れるこの曲。どこまでも伸びていきそうなWakanaの声とアンサンブルが折り重なって、目の前には幻想的な夜の風景へと切り替わっていく。空間を抱くように丸く奏でられるメロディーの間を、Wakanaの声が吹き抜けていくような感覚だ。ここまでの歌声を聴いてきて痛いほど感じるのは、Wakanaの圧倒的な歌の表現力と歌でストーリーテリングをする力。声への力の入れ方や抜き方、一つ一つの言葉の発し方や響かせ方で、目の前に物語を出現させてくれる魅力がある。分かりやすく表現するならば、まるでミュージカルを見ているようと言えばお分かりいただけるだろうか。

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「第1部は大好きなジブリ作品から選曲をしています。小さい頃から宮崎駿監督の作品が大好きで、どれが一番好きというか、見た時にはそれが一番好きってなっちゃうんです」と笑顔がこぼれる。「次に披露するのは…」と続けたのは『紅の豚』からの一曲。ジブリ作品は年齢を重ねるたびに印象が変わって、幼い頃は気付かなかったことに気付くこともあるという。公開当時見た『紅の豚』は大人っぽい作品だと思っていたけれど、今は大切なものを大切な思い出として抱えて生きている大人のすてきさに気付いたという。Wakanaが歌い始めたのは「時には昔の話を」。ここまでの曲の歌詞は、たくさんの人に向けて歌われているような内容だったが、この曲は聴いている“あなたへ”向けられている。直接語り掛けられているような、Wakanaの歌声と芳醇なクラシックアレンジがマッチする大人のジブリソングを情感たっぷりに届けてくれた。

休憩を挟み、衣装チェンジして再びステージに登場したWakana。第2部はどんな歌を聴かせてくれるのだろうか。後半戦は大江千里が発表し『言の葉の庭』で秦基博がカバーした「Rain」からスタート。男性目線でつづられた歌詞ながら、女性ならではのしなやかさをたっぷり効かせつつ、本当に届けたい言葉に力強さを加えているのがとても印象的に響く。とある映画のエンディングテーマであり、この季節の名曲の大本命へ。きらめく太陽、向日葵の佇まい、青く高い空。Wakanaの軽やかな歌声を聴いていると、暑い夏の景色もどこか涼やかなものに思えてくる。「次にお届けする曲は、レコーディングの時にずっと一緒に歌っていたスタッフさんがいて(笑)、人によって思い出があって、一緒に歌いたいのはすごく分かるし、アニメソングってそういう心をかき立てられるものでもあるんだなと思った曲です」というのは、「シティーハンター」に採用され大ヒットを記録した「Get Wild」。Wakanaがカバーするに当たって、ダンスミュージックの名曲にクラシックアレンジを施した意欲作だ。クラシックならではの上品さに、弾むようなリズムで加えられたポップさと疾走感。ここまで歌ってきた曲とは違い、Wakanaも体全体をリズムに乗せて歌うことを楽しんでいる様子。勢いそのままに「手拍子お願いします!」と客席にもクラップを促して閉塞感溢れる今の世界を生きている全ての人の背中をグッと押してくれるような歌詞が心に刺さる楽曲を、今日のライブで最もポップに、楽しげに歌い上げた。この日この場に集う全員へのエールのような数分間だった。「手拍子、ありがとうございました! 本当にちょっと今までとは少し住む世界が変わってしまったけれど、音でみんなでつながり合える世界は変わらないんだなって。みんなで一緒に音楽を作っているんだと感じることができました」と一言。最後の曲となったのは『天気の子』より「愛にできることはまだあるかい」。この時代を生きる私たちに必要な言葉が詰まった歌だ。「ずっと私は音楽を続けていきたいし、言葉を伝えていくことの大切さも、この曲を歌うことで感じることができました」と思いを告白。クリアな高音が広がっていくWakanaの独唱に始まり、どんどんアンサンブルの調べが豊かに膨らんでいく後半まで、彼女の声が持つたくさんの表情が垣間見える一曲で本編を締めくくった。

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