今年12月にシアタークリエで『ガラスの動物園』を上演することが決定した。本作は、劇作家テネシー・ウィリアムズの出世作であり、1945年のブロードウェーでの初演以降は世界中で上演され、国や時代を超えて愛され続けてきたアメリカ文学最高峰の名作戯曲の一つだ。
舞台は30年代のアメリカ・セントルイス。夫が出奔して以来、息子・トムの収入を支えに、女手一つで子どもを育ててきた母・アマンダが、内気な娘・ローラの行く末を案じ、トムの同僚・ジムをローラに引き合わせようと計画するところから物語は始まる。登場人物は4人。町を出るという夢を抱きながらも、一家を支えるために倉庫で働くトム。足が不自由なために内向的で、ガラスの小動物を集めて自分の世界に引きこもるローラ。家族を愛するあまり、夢や妄想に支配されてしまうアマンダ。ローラが憧れる好青年のジム。トムは作者であるテネシー・ウィリアムズの投影ともいわれ、劇の進行役として観客に自らの思いを語り掛ける。
物語はトムの回想で表現される。ノスタルジックで叙情的な追憶の芝居は、トムが閉塞感を抱えながら家族と過ごした日々、かなわわぬ夢を見続けながらも懸命に生きる家族の姿を浮かび上がらせ、見る者は胸を締め付けられずにはいられない。
主人公・トム役には人気と実力を兼ね備え、ドラマや映画に加えて舞台での活躍も目覚ましい岡田将生。シアタークリエ『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』以来、約2年ぶりに再び演出家の上村聡史とタッグを組む。共演者には倉科カナ、竪山隼太、麻実れいといった実力派が集結した。
[岡田将生コメント]
日本でも幾度となく上演されたこの戯曲がいつの時代でも必要とされ、とても完成度が高い作品とは知っていました。戯曲に魅了され、この物語に、家族に、触れられることをとてもうれしく思っています。この作品にはいろいろな感情が渦めいていて、不安、もろさ、危うさ、絆であったり。一瞬でもこの線が切れてしまったらこの舞台は台無しになってしまう。とても集中力がいるこの舞台はやりがいしかないと思っています。キャストの方々とこのテキストで新しい発見ができる稽古場がほんとに楽しみです。上村さんとは以前『ブラッケン・ムーア』という舞台をやらせていただき、今回で2度目です。とても信頼している演出家ですし、机の上で作品をひもといて共有し、理解を深めていくあの時間は勉強になりましたし、芝居がより深く強くなっていく気がします。この物語の核は、家族愛です。その中に見え隠れする人に対する弱さであったり、悲しみをどれだけ表現できるか。それを見てくださる方々に提示していく、架け橋のような芝居が求められている気がします。この繊細な作業を見てもらいたいです。
東京公演は12月に東京・日比谷シアタークリエにて。その後、22年1月から全国ツアー公演あり。詳細は後日発表する。