日生劇場にて2024年5月9日に初日を迎えたミュージカル『この世界の片隅に』。こうの史代による原作漫画は、太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の物語でありながら、つつましくも美しい日々とそこで暮らす人々が淡々と丁寧に描かれ、それゆえにいっそう生きることの美しさが胸に迫る作品。
2度に亘る映画化、実写ドラマ化と、 様々に形を変えて永遠に残り続けるであろう不朽の名作を、ミュージカルとして新たに上演された。脚本・演出は、原作コミック『四月は君の嘘』をミュージカル作品として成功へと導いた実績もある上田一豪が務めた。
そして、ミュージカル全編を彩る珠玉の音楽は、歌い継がれ続けている 国民的合唱・卒業ソング「手紙 ~拝啓 十五の君へ」を作詞・作曲し、 2014 年の渡米からミュージカル音楽作家として10 年ぶりに再始動したアンジェラ・アキが手掛け、大きな反響を得ている。
キャスト陣には、絵を描くことが大好きな主人公の浦野すず役を昆夏美と大原櫻子が W キャストで、すずが嫁ぐ相手の北條周作役を海宝直人と村井良大の W キャストで、すずと周作 の三角関係となる白木リン役を平野綾と桜井玲香が W キャストで、すずと幼馴染で淡い恋心をいただいていた水原哲役を小野塚勇人と小林唯が W キャストで、すずの妹の浦野すみ役には小向なるが、周作の姉ですずにとっては義姉の黒村径子役を音月桂と、人気実力派が勢揃いした。
日本のオリジナル・ミュージカルとしての評価は高く、劇場は大きな感動に包まれている。日生劇場で開幕の後、全国8都市を巡るツアーを展開し、『この世界の片隅に』の舞台である広島県呉市にて大千穐楽を迎えた。
呉信用金庫ホールでの公演は、3公演とも満席で迎えた。7 月27 日16 時、28 日12 時開演の大千穐楽公演は、uP!!!とTELASA でインターネット配信を行う。(アーカイブあり)そして27・28 日両日ともにカーテンコールでは、音楽を手掛けたアンジェラ・アキが登場し、キャストと共に観客にメッセージを届け、27 日は昆夏美、海宝直人、平野綾、小林唯が、28 日は大原櫻子、村井良大、桜井玲香、小野塚勇人、小向なる、音月桂らが千穐楽を迎えた。
27 日カーテンコール時に、アンジェラは「キャストの皆さんが方言の勉強をどれだけやられていたか傍で見ていたので、皆の広島弁と呉弁の違いどうでしたか?」と呉のお客様に尋ね、キャストが大きな拍手で讃えられて、涙する場面も。28日カーテンコールは、脚本・演出を手がけた上田一豪も登場した。千穐楽の舞台本編と、昆夏美、大原櫻子、海宝直人、村井良大、平野綾、桜井玲香、小林唯、小野塚勇人、小向なる、音月桂、白木美貴子が挨拶をしたカーテンコールの模様は、ノーカットでアーカイブにて閲覧できる。
昆夏美(浦野すず役)コメント
「日本オリジナルの、日本人の、日本の歴史の物語の素晴らしい作品が誕生したな、と思います。こちらの呉では、土地の物語でもあると思うので、千秋楽を迎えさせていただいて、特別な思いがしています。この作品には、いっぱいのメッセージがあると思うのですが、毎回、大切な人との思い出は自分の心においておけばいつでも会えるというメッセージに胸を打たれて『記憶の器』を歌っていました」
大原櫻子(浦野すず役)コメント
「3月から稽古がはじまって、ふたを開けてみたら壮絶な早替えと歌の量、台詞量とで、こんなにカロリーの高い役は出会ったことがないんじゃないかと思います。舞台裏で助けてくださるスタッフ・キャストの皆さん、本当に愛にあふれたカンパニーだと思っています。優しくて仲が本当に良いカンパニーに囲まれている日々が本当に愛おしくて・・・また皆さんと出会いたいと思っています」
上田一豪(脚本・演出)コメント
「台本を書いていたのが2020年のコロナ禍。呉で千穐楽を迎えるぞという思いが非常に強くありました。ここで80年近く前に生きた人達の温度や匂いや人生をどうやって表現するか、稽古場でアンジェラさん、キャストの皆さんと一緒に考えました。たくさんの温かいお客様に包まれた、キャストの素晴らしい姿を見て、こうの史代先生の描いた世界がここにあるんだと実感できて感動しました」
アンジェラ・アキ(音楽)コメント
「演出家が脚色するためにとても孤独な作業を成し遂げられて、(音楽担当の)私の手に回ってきて、そこから数年かかります。その間に何度か壁にぶち当たって、私に出来ないかも、と本当にどうしようと思った瞬間もいくつかありました。その時は自分を奮い立たせて前に突き進む力を見つけて進んでいって(音楽が)出来上がったときに、今度はキャストの皆さんにバトンタッチしてそこから皆の孤独な作業が始まります。役作りに向き合ったり、方言のお勉強をしたり、歌を一生懸命いろんなことを試してくれて、沢山の時間を費やしてくださって、そこからオーケストラ、ステージにいないスタッフの人達の孤独な作業がはじまって、そんな孤独な作業が集まって、今日のこの大きな作品になりました。この作品をみてくださった皆さんが、もうちょっと頑張れる、前に進んでみようという、そんな力や勇気につながってくれたらと思います」
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