2003年の「冬のソナタ」の大ヒットの後、続いてNHK-BSで放送された韓国ドラマ第2弾の「美しき日々」。主人公のイ・ビョンホン、チェ・ジウ、リュ・シウォンが韓流スターとなったのはおなじみだが、ドラマの劇中でリュ・シウォンが演じた覆面歌手の名前がZERO。劇中では、素性を隠して顔も見せず大ヒット曲を発表しているという人物で、演じているのはリュ・シウォンだが、実際に劇中で流れたZEROの音楽は全て彼が歌った曲だった。韓流ブームをきっかけに、劇中の歌手と同じ名前で04年に日本デビューしたZERO。その後、彼はコンサートを中心に日本で活動を続けてきた。年配の女性を中心に大人気の彼のコンサートが、BSフジで放送される。いつもコンサートに行っているファンはもちろん、なかなか会場に足を運べないファン、そして元祖韓流ドラマが好きな視聴者には必見。コンサートの見どころをはじめ、ZEROさんの近況をインタビュー取材した。
観客の皆さんが自由に楽しむ
そんなところが見どころです
――先日コンサートを拝見させていただいたのですが、観客が全身で楽しんでらっしゃって、見て聴いて楽しむだけでなく、隣の人ともコミュニケーション取ったり、舞台のZEROさんに話しかけたり、会場の雰囲気がすごくいいですね。
そうなんです。悪くいうと、自由過ぎるんです(爆笑)。みなさん、自由に舞台に向かって話しかけてくれたり、そういう場面が多いですね(笑)。でもそれも、皆さんの一つの楽しみ方なので、それはそれでいいかな、と思っています。
――そうですね、おとなしく座っているだけではなく、芸能の原点を見させていただいたと思いました。
ありがとうございます。
――ZEROさんとしては、コンサートをどのように作り上げたいと思われているのですか?
基本は楽しいコンサートにしたいと思っています。僕はバラード歌手なのですが、バラードばかり歌っているとつまらないし、ドラマの主題歌や挿入歌などではバラードをたくさん歌ってきましたが、そういう曲では、ドラマのシーンが思い出せるような泣かせるような歌を心をこめて歌って、MCのときはたくさん笑わせて、そのギャップを楽しんで頂きたいと思っています。みなさんに、いろんな楽しみをお届けするのが、コンサートの基本のコンセプトです。
――毎回同じことはできないと思いますが、どんな点を工夫されていますか?
基本的なMCは考えておきます。それは、直前に考えるわけではなく、普段の生活の中で、面白いことがあったり、発見があったりしたときに覚えておくんです。そして、それを次のコンサートのときに話したりするんです。この曲とこの曲の間にこの話をしたいとか、考えるんですよ。でも、最近はアドリブが増えました(笑)。先ほど話したようにファンの方も自由過ぎるので(笑)、それは台本にはできないので、瞬間、瞬間で判断してファンの皆さんに合わせて、アドリブで楽しんでいただくというのが増えてきましたね。
――BSフジで放送されるコンサートは、先日のコンサートでもゲスト出演されていた保科有里さんが司会を務められる番組なんですね? 保科有里さんとはどういうきっかけでご一緒されるようになったのですか。
保科さんがコンサートにゲスト出演してくださったので、放送される番組では、保科さんがナレーターをしてくださるんです。昨年の4月頃、保科さんが韓国でディナーショーをされるということで、司会や通訳を手伝ってほしいというお話を頂いて、お手伝いしたのがきっかけだったんです。それから、デュエットを歌ったり、ゲストに来ていただいたりするようになりました。
――ファンの方も保科さんを温かく受け入れている感じがよかったです。
保科さんが性格も良くてお姉さんのように気遣ってくれるので、ファンの方も皆さん、「ZEROをよろしくね」という感じだと思います。それに、実際にデュエットすると、2人のハーモニーがステキだねとも言ってもらえます。
――新曲「幸せになりたい」を今回放送されるコンサートでも歌われるそうですが、新曲についても教えてください。
新曲は定期的に発表しますが、この曲は2017年の6月に発表しました。平和、自由、愛をテーマにしています。バラードなど世の中には恋愛の曲が多いですが、それはもうおなかいっぱいじゃないかと思って。それよりも、今の時代に必要な曲を作ろうと思いました。世界中、戦争や政治的なあつれきなどが多いので、平和の希望の曲を作りました。
――放送されるコンサートの見どころを教えていただけますか。
韓流ドラマを好きな方はたくさんいらっしゃると思います。その代表的な韓流ドラマの主題歌(「美しき日々」の主題歌「約束」、挿入歌「Good Bye」、「冬のソナタ」の主題歌「最初から今まで」、「天国の階段」主題歌「会いたい」、「オールイン 運命の愛」主題歌「初めて出遭った日のように」)を歌っているので、そういう点を楽しみにしていただきたいですし、他にも日本の曲をカバーしていますので、ZEROが歌うとどう表現されるのかなども見ていただきたいです。また、MCも楽しみにしてほしいですね。たくさんお客さんを笑わせていますので(笑)。
日本各地にライブツアー
北海道で偶然見た満天の星に大感動
――ライブは年にどのくらいやっているのですか?
今年(2017年)、人生の中で一番多かったと思います。ソロコンサートが12会場、24回。そのほかにも、日本の歌手の先輩方と、歌謡祭などに出たり、ゲストで出たりするのを入れると、100回くらいです。
――ほぼ毎日ですね。
社長が休ませてくれないんです(笑)。
――ZEROさんはコンサートで全国を回ってらっしゃっていますが、特に印象に残っている地域とか、物とかありますか?
どこも印象に残っているのですが、北海道でちょっとした事件があったんです。今年なんですが、北海道でツアーがあったんですが、コンサートが終った夜、次の会場に移動するためのホテルに行く途中だったんです。その日は初雪だったのか、すっごいたくさん雪が降ったんですね。事務所の社長が運転する車で、真っ暗な大雪の中、僕と保科さんと3人で移動していたんです。それ自体も不安だったんですが、ナビの設定を間違えてしまって、全く人けのない山奥に行ってしまったんです。その真っ暗な中で外に出て空を見ると、星がばーっと、本当にたくさんの星が見える風景が目の前に広がっていて、人生で一番の素晴らしい星空が見られたんです。そこに、シカが道路を渡っていて、そしたらまた次のシカ、次々とシカも通っていって、大自然を感じることができました。北海道って、雪がいつ降るか分からないような天気が急転したりするみたいで、山道まで間違っていってしまってすごく不安だったんですが、結局、そんな人生初の素晴らしい風景に出合えて感激したんです。
(社長 北見から帯広に行かなきゃならなくて、北見が初雪で20センチくらい積もって、高速が使えなくなったんです。下道を行ったんですが、ずーっと行ったら突き当りで…。また戻ってきたら本当に真っ暗闇で。でも、外に出たら本当に星がきらめいていて、「きれいだ、きれいだ」ってZEROが感動してました)
本当に、間違ったナビに感謝しました。
――日本の食べ物は何が好きですか?
お刺身も、焼肉も、何でも食べます。ただ、コンサートの日はホテルで朝食を食べますが、基本的に、朝は和食です。和食を食べないと落ち着かないんです。
――韓国が友だちや親戚が来たときに、何をご馳走したいですか。オススメの食べ物は?
納豆ですね。
――韓国の方は食べられないのでは?
韓国でも、チョングッチャン(発酵大豆のチゲのようなもの)という似た料理があるから、意外と食べてみるとおいしいっていうのもありますよ。だから、僕はスーパーで何箱も納豆を買って帰ることもありました。韓国では納豆を混ぜてごはんにかけるという習慣はないのですが、意外と好評ですよ。梅干しとかも。
――普通はあんまり好きじゃないという話を聞きますが。
日本に来たら、日本の食べ物を食べてみて、と言います(笑)。
――チェロをされているとか。
趣味でやってます。
――いつごろから始めたのですか?
始めたのは3年くらい前です。音大で専攻したのは、ファゴットという楽器だったんですね。弦楽器はやったことがなかったので、ちょっとやってみようと思ったんです。それに、チェロを弾きながら歌うっていう歌手は今まで見たことがありませんので、ちょっとチャレンジしてみようかなと思って。
――歌いながら、ですか?
もちろん、演奏と同時に歌うのは無理ですよ(笑)。イントロとか、間奏ではチェロを弾いて、休むところで歌う、と。
――さだまさしさんのバイオリンみたいな感じですね。
そうです。
(社長 チェロを弾いて歌うのは、ビリーバンバンとか)
そうなんですか! でも社長、それ大きいやつじゃない?
(社長 そう、大きいの)
コントラバスですよ(笑)。それも珍しいですね。大きさで負けました(笑)。
――ZEROさんといえば、高いファルセットが有名ですが?
ドラマの曲が多かったので、ファルセットからスタートしたのですが、最近はあまりやらないです。ドラマの曲はファルセットの曲が多いと思うのですが、そればかりじゃ耳が痛いし(笑)。
――どんなジャンルの音楽が好きですか?
ジャンルは関係ないですね。全部好きです。ただ、アイドルの曲はあんまり聴かないですね。年とったのかな(笑)。
――歌手になったきっかけは?
小学生のときから歌手になりたかったんです。チョー・ヨンピルさんが当時はすごく人気があって、LPを聴きながらマネをしたり。中学校時代は休憩時間とかに歌っていたら、噂になったりもして。大学に入って歌謡祭に出たら優勝したりしたんです。そういうことがきっかけで、ある作家さんが事務所を紹介してくれて、デビューすることになりました。
――そのとき歌っていたのはバラードですか?
バラードとロックを融合した感じですね。
――韓国でサイバー歌手としてデビューされたと聞いていますが、サイバー歌手というのはどんな歌手のことですか?
日本でも最近あると思うのですが、コンピューターで作られたキャラクターなんです。アダムという歌手という設定のキャラクターだったんですが、歌は僕が歌ったんです。そのアダムが話題になって、アダムがCMにも出演したりしました。キャラクターなのでストーリーが作られていて、アダムが学校に入学したとか、そういう面白いエピソードもありました。
――実際に形は存在しないけれど、ウワサだけあるというものだったのですか?
形も作られたんです。でも、何か活動するたびにアニメーションを作らなければならないし、活動には制限がありました。ところが、ここにきて、ちょうど先日、韓国から連絡があって、かつて有名だったサイバー歌手アダムを、誰が演じて(歌って)いたのか誰もしらないので、番組に出演して歌ってくれないかという依頼がありました。それで、2018年1月に打ち合わせすることになっています。
――では最後に、2017年、一番記憶になった出来事は?
さっきの北海道ですね。ナビの間違いのおかげで、きれいな星が見られたことです。急な展開だったから、よけい印象に残っています。それと、今年は本当にコンサートが多くて移動距離が長かったことですかね。あとは、日本のたくさんの先輩歌手と一緒に仕事ができたことも印象深くてうれしかったことです。
――2018年の目標は?
もっとコンサート回数を増やしたいです。
――これ以上、さらに、ですか? 体が足りないですよ。
いやいや、本当にそれがうれしいです。コンサートに来てくださるお客さんも増やしていきたいです。そのためにいろんな活動をしていきます。みなさん、よろしくお願いします。
ZERO(ゼロ)
1972年5月14日、ソウル生まれ。1998年サイバー歌手アダムとしてデビュー。韓国ドラマ「美しき日々」(2001年韓国SBS放送)の劇中に登場する覆面歌手ZEROの楽曲を歌ったことがきっかけで、日本でも話題となり2004年日本歌手デビュー。その後、コンサートを中心に日本で活動を続ける。
「夢のスター歌謡祭スペシャル~ZEROコンサート2017~」
BSフジ 1月19日(金)後5:00~6:55 放送
2017年に行われたZEROの全国ツアー「ZEROコンサート~更なる夢への挑戦~」のコンサートの模様をお届け。番組進行役は、同コンサートにゲスト出演している歌手の保科有里。韓国ドラマの主題歌を歌う歌手として有名なZEROが、「冬のソナタ」「美しき日々」「天国への階段」の主題歌などをはじめ、日本の有名曲もカバー。聴き応えのある歌と、楽しいMCが人気のコンサート。